私の腰椎椎間板ヘルニア



私と腰痛との長いお付き合いをお話いたします



外傷がもたらした腰痛(21歳の時)

初めて腰痛を経験したのは大学時代にさかのぼります。ラグビー部に所属し、社会人との練習試合で、不意に後方よりタックルされ、腰部を捻挫して2〜3日寝込んだ事に始まります。しかし、その後は、時に腰痛を感じる事があっても日常生活動作に支障を来たす事なく良好に経過しておりました。



不良姿勢がもたらした腰痛

大学卒業後は整形外科医として長時間の手術に立ち会う都度、腰痛のため、手術中に、しゃがみ込む事が再三ありました。「筋 ・ 筋膜性腰痛症」と自己診断し、薬物療法外用剤非ステロイド系抗炎症剤筋弛緩剤など)や腰部のストレッチング筋力強化訓練にて、何とか難を逃れておりました。



ストレスがもたらした腰痛

13年間の勤務医生活を経て、平成元年8月1日、生地である山口県の宇部市で、整形外科専門医として開業しました。勤務医時代に比べ、開業医の仕事はハードで、日々過大なるストレスを被り、不良姿勢での作業(中腰での診察や処置、外来手術)なども相まってか、頻回に腰痛を訴えるようになりました。

しかし、腰椎のレントゲン検査で異常所見を認めないため、その都度、薬物療法(外用剤や非ステロイド系抗炎症剤、筋弛緩剤、抗不安剤など)や腰部のストレッチング、筋力強化訓練にて経過観察しておりました。



スキーがもたらした腰痛

平成9年1月、院内のスタッフとスキーに行きました。初心者3名にスキーの指導(中腰で、後方より体を抱きかかえ込み、長時間に渡ってボーゲンの指導をしました)を行って後、過去に経験した事のない激しい腰痛を認めました。レントゲン検査では椎間板の狭小化を認めましたが、ヘルニアを思わす様な神経症状(足先への放散痛やシビレ感、筋力低下など)を有しないため、安静と同様な治療にてしのいでおりました。



ゴルフと長時間の運転が引き金となり発症した根性坐骨神経痛

平成9年7月、腰痛は日常生活動作やスポーツ活動に全く支障ない程度に回復したため、友人と熊本県の某ゴルフ場へ出かけました。片道4時間の強行軍でした。プレー中は腰痛を訴える事もなく、スコアーも良く(OUT35・IN37)、大変満足した一日でした。

しかし帰宅後、車から降りようとした際に、臀部から右下腿へ放散する痛みを認めました。「いわゆる根性坐骨神経痛」の発症です。出来る限りの安静と薬物療法、簡易コルセットの着用で経過を見る事にしました。その後、急性期を過ぎると症状も一進一退となり、時に好きなゴルフを楽しみ、仲良く根性坐骨神経痛と付き合いながら生活しておりました。



腰椎椎間板ヘルニア

平成9年8月盆休みに、色んな付き合いもあって三日間続けざまにゴルフを行いました。一日目、二日目までは何ら症状を認めなかったのですが、三日目のスタートホールの二打目を打ち終えて後より、腰部から右臀部、右下腿への放散痛が出現いたしました。

痛みは次第に増悪し、さらに下腿のシビレを認め、やがて間欠性跛行(数100m程度歩くと休憩が必要になる状態)を呈するようになりました。この痛みは歩行で悪化し、しゃがみ込むと改善します。(特に、グリー上で、パットのラインを読む際の前かがみの姿勢が最も楽な状態でした)。MRIを行ったところ、第5腰椎―第1仙椎間のヘルニアが確認され、「腰椎椎間板ヘルニア」と確定診断されました。



保存的治療(手術しない方法)について

さっそく、装具療法としてダーメンコルセットを着用し、薬物療法外用剤非ステロイド系抗炎症剤筋弛緩剤)やリハビリテーション温熱療法腰椎牽引療法など)や神経ブロック療法トリガーポイントブロック仙骨硬膜外ブロック、腰部硬膜外ブロック)を行いました。

しかし、ある日の事です。以前より個人的に腰椎牽引療法の牽引力(どの程度の牽引力、重量が治療に有効か?)や牽引時の肢位に関して、常々、試行錯誤しておりました。一般的に「体重の半分程度の重量が適切だ」と言われております。私の場合、体重が70Kgですので35Kgが適切な牽引力と言う事になります。この際、身を持って試そうと思い、25Kgから牽引を開始し、30Kg→35Kg→40Kg→45Kg→50Kg→55Kg→60Kgと増加した所、60Kgの時点で症状が急変し、耐え難い下肢痛が出現しました。

その後、症状は悪化の一途を辿り、日常生活動作に不自由を感じ、3分間歩行で1分間の休憩が必要となるまでに間欠性跛行は悪化しました。又、体位によっては(うつ伏せ寝の状態では)腰痛や下肢痛が増悪し、睡眠がとれず、海老の様な姿勢でしか眠られない状態となりました。改めて、腰椎牽引療法の適応と牽引方法の重要性を思い知らされました。

平成9年12月、最後の望みを託して神経根ブロック療法を行う事にいたしました。神経根ブロックは整形外科の中で最も痛い診断法であり治療法です。しかし、劇的に症状が改善した症例や完治例を何度となく経験しておりましたので、恐々決断しました。しかし、神経根ブロックの結果は思わしくなく、私の腰椎椎間板ヘルニアは「手術の適応あり」と観念しました。手術にあたっては、出来る限り、患者さんに御迷惑をおかけしないようにと、年末年始の休日を利用する事にしました。



手術的治療について

平成9年12月26日、午前中の外来診察を終え病院へ直行しました。直ちに抗生物質のテストや浣腸、前投薬処置が行われ、14:00に手術室へ搬送されました。手術室では脈拍や血圧測定、心電図装着、点滴確保と言う型通りの手順で静脈麻酔にて導入されました。10を数える間もなく、夢の中へと意識が奪われました。

術式(手術の方法)はラブ法が選択されました。手術時間は40分程度で、術後1時間30分後には病室で覚醒しました。痛みもなく極楽、極楽の気分でした。このような快適な麻酔なら何度受けても良いと思ったほどです。その後、主治医からヘルニアの重量が2、8gで、ヘルニアによって神経根は、かなり圧迫、牽引されていたとの報告を受けました。



術後の経過

術後の経過は良好でしたが、開業医の宿命とでも申しましょうか、診療が気になり主治医にお願いして、術後6日目に早期退院させて頂きました。平成10年1月4日(術後8日目)からコルセットを着用し診療を再開しました。ところが無理が祟ったのでしょう。術後3週目頃より、おしっこの切れが悪く、尿漏れ、残尿感を認めました。「直腸膀胱障害でも発生したのかなぁ〜」と考え、MRIを施行しました。MRIでは硬膜外に血腫が認められ、馬尾神経が高度に圧迫されておりました。結局の所、社会復帰が早かった訳です。今考えれば無謀でした(当然、患者さんに対しては、この様な行為は絶対許可いたしません)。医者の不養生と反省しきりです。

幸いにして手術後6ヶ月目には硬膜外血腫はほぼ消失し自覚症状も改善され、現時点では腰部のこわばりや軽度の腰痛を認めるものの、日常生活動作やスポーツ活動において何ら支障なく生活出来ております。



まとめと反省

■「私の腰椎椎間板ヘルニア」はスポーツ活動や長時間にわたる作業、運転などの際、ウオーミングアップ(準備運動)やクーリングダウン(整理運動)として行うべきであるストレッチング筋力強化訓練を怠ったために発症したと考えられます。すなわち、自己管理能力の甘さ、欠如が誘因と言う事になります。

■もう少し時間をかけて、適切なリハビリテーション温熱療法牽引療法ストレッチング筋力強化訓練)や薬物療法神経ブロック療法装具療法を継続すべきだったと反省しております。

■後療法(手術後のリハビリテーション)に問題がありました。せっかく立派な手術をして頂いたにもかかわらず、焦って、早々に社会復帰した点です。病人は焦らず、慌てず、ゆっくりとした自然な体の営み(自然治癒能力)に任せて、養生する事が大切ですね。

今回の経験によって腰痛の辛さを身を持って肌で感じ、多少なりとも腰痛を有する患者さんの苦しみと不自由を理解・共有できたように思えます。今後はこの経験を診療の場で生かしたいと存じます。


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