最新の医療情報(平成14年〜)



大衆薬の販売方法、副作用リスクに応じて見直し

厚生労働省は、かぜ薬など薬局で売る大衆薬を副作用の程度で3つに分類し、リスクの高い薬は薬剤師がカウンター越しに手渡しする対面販売を義務づける方針を決めた。発毛薬や胃腸薬、水虫治療薬にも対象になる薬があり、陳列棚から購入者が自由に手にとって選んでいた薬局やドラッグストアの光景は様変わりしそうだ。 年明けの通常国会に薬事法改正案を提出、06年度中にも施行される見通しだ。大衆薬の販売制度の大幅な見直しは60年に薬事法が制定されてから初めて。新制度では大衆薬を主要成分に応じて、A分類=安全性の評価が確立していない、B分類=まれに入院以上の健康被害が起きる可能性がある、C分類=入院までは至らないが、身体に不調が起きる可能性があるに分類される。対面販売や薬剤師による文書説明について、Aは義務化、Bは「努力義務」とする。一方、リスクが低いCは電話相談窓口設置などを条件にインターネットなどでの通信販売を認める。また販売員の質を上げるため、副作用や薬事法など安全対策を中心にした試験を新設。薬剤師かどうか区別できるよう、着衣の色なども定める。副作用は、例えば胃腸薬ガスター10の主成分ファモチジンの場合、肝機能障害や呼吸障害などが報告されている。現行の薬事法は、医薬品を売る際には薬剤師や販売員が購入者にこうした副作用情報を伝えるよう義務づけている。しかし実際には薬剤師が不在だったり、情報提供が不十分なまま販売されたりする例が多く、薬害防止に向けて販売方法の見直しが課題となっていた。(A分類)リアップ、ファモチジン、ガスター10、ブテナロック(B分類)バファリンA、ベンザブロックIP、マキロン(C分類)イソジンうがい薬、ハイチオールC (平成17年12月30日朝日新聞)

新型インフルエンザに対する行動計画

東京都は26日、世界規模での流行が懸念される新型インフルエンザに対する行動計画をまとめた。予測を超えた大流行の際には、公立学校の体育館などを医療施設に転用することなどを盛り込んだ。都総務局などによると、都内では最大で約380万人が感染し、約1万4000人が死亡すると予測。国は人口の25%が感染すると想定しているが、都は人口集中を考慮し、約30%の感染を想定した。この予測を超えて大規模に流行した場合、知事が緊急事態宣言を出し、公共交通機関の運行縮小や野球場、劇場など集客施設でのイベント自粛を要請する。病床が不足する事態に対処するため、公立学校の体育館などの施設を臨時医療施設として使い、外来診療や入院患者の受け入れを行う。(平成17年12月26日毎日新聞)

インスリン調節の酵素発見

血糖値を下げるインスリンの分泌量を調節する酵素を富沢一仁岡山大助教授(細胞生理学)らが26日までに見つけた。血糖値が高くないときにインスリンが効きすぎると、低血糖となり意識障害を起こす場合があるが、この酵素の働きを抑制すると血糖値が高いときだけインスリンの分泌が促進される。 糖尿病の新たな治療薬開発につながる可能性があるという。富沢助教授らは、脳の神経細胞にある酵素「Cdk5」が、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のベータ細胞にもあり、インスリン分泌量を制御していることを突き止めた。(平成17年12月26日 中国新聞)

おなかの風邪、今冬も急増中

「おなかに来る風邪」と呼ばれる感染性胃腸炎が急増中だ。昨冬には広島県の特別養護老人ホームなどで多くの死者を出しており、乳幼児や高齢者には、特に注意が必要だ。全国約3000の小児科を定点観測している国立感染症研究所によると、感染性胃腸炎の報告は10月半ばごろから増え始め、最新集計の11月28日〜12月4日の1週間では1医療機関当たり11.75人が受診。山口、佐賀、福井、福岡の4県では20人を超えた。昨冬のピークは12月20日〜26日で全国平均15.83人だった。 感染性胃腸炎は腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、発熱が主症状で、ウイルスや細菌、原虫などによって引き起こされる。今の時期はノロウイルスが大半を占めるとされており、昨年暮れから今年の年始にかけて広島県の特養で入所者7人が死亡したのもその集団感染だった。ノロウイルスは寒いほど長生きすると考えられている。通常は適切に水分補給すれば1〜3日で回復するが、乳幼児や高齢者では急激な脱水症状や吐物による窒息などに注意が必要だ。下痢止めは、病原体を腸内にとどめ、症状を悪化させかねない。予防には、例えばカキなどの食べ物を85度で1分以上加熱してウイルスを殺すほか、トイレ後などの手洗い徹底が大切だ。特に、保育施設や高齢者施設では、配膳や、吐物や便の適切な処理と消毒が重要だ。感染研の岡部信彦・感染症情報センター長は「感染の疑いがある人は入院・入所者の見舞いを避けるなど、うつさない配慮も必要。症状がなくなっても1週間程度はウイルスが出ているので油断しないで」という(平成17年12月24日 朝日新聞)

医療費、「包括払い」の病院拡大へ 

厚生労働省は来年度、医療機関への医療費の支払いについて、あらかじめ設定した一定額しか払わない「包括払い」(DPC)の対象病院を現在の82病院から拡大する方針を決めた。試行的に実施している62病院すべてを対象に加えるほか、調査に協力している228病院の多くにも広げる考え。また、現在「1日当たり」の金額設定を、将来的には「1入院当たり」に変更するよう検討を進めている。DPCは、例えば注射を打てば打つほど病院の利益になる現在の出来高払い制を改め、何本注射をしても一定額しか支払わないようにする制度。入院中の注射のほか、検査、投薬などを対象としている。医療費膨張に歯止めをかけるのが狙いで02年度に導入され、現在は大学病院などで実施されている。同省はDPC対象病院を今年7〜10月に退院した52万人について、平均入院日数を調査。02年同期に比べ2.81日減の17.56日に短縮されるなど、毎年着実に入院日数が短くなっているという。ただ、同じ病気で6週間以内に再入院した人の割合は毎年増加している。02年は2.54%だったのに対し、05年は4.26%に増えた。こうした点を日本医師会は「診療内容がよくなったとは言えない」と批判している。(平成17年12月23日 毎日新聞)

療養病床、介護型を2012年度めどに廃止

厚生労働省は21日、長期にわたり療養している高齢者が入院する療養病床への介護保険の適用を2012年度をメドにやめる方針を決めた。医療の必要性が薄いにもかかわらず長期入院する「社会的入院」を減らすのが狙い。同病床は医療保険の対象となる患者しか利用できなくする。すでに介護保険を適用している病床は老人ホームなど居住型の介護施設への転換を促す。療養病床は長期療養が必要な高齢者のためのベッドで、全国の医療機関に約38万床ある。入院費などが介護保険から給付される介護型(14万床)と医療保険が適用される医療型(24万床)に分かれている。(平成17年12月22日 日本経済新聞)

がん促進遺伝子、転移抑制効果も 京大助教授ら発見

膵臓がんや肺がんなどを引き起こす遺伝子「N−ras」に、がんを悪性化させたり、転移を抑える働きもあることを、京都大の高橋智聡・特任助教授と米ハーバード大のマーク・ユーイン博士が発見した。新しいがん治療開発の手がかりとなる可能性がある。N−ras遺伝子は、突然変異が起きたり、「Rb」と呼ばれるがんを抑制する遺伝子がなくなると、さまざまながんを引き起こすことが知られていた。高橋助教授らは、マウスの体に二つずつあるN−rasとRbの遺伝子を一つ、あるいは二つ欠損させ、体のどの部位にどんながんができるかを調べた。Rbだけを二つとも欠損したマウスは脳下垂体に悪性のがんができたが、Rbに加えてN−rasもすべて欠損すると、がんは良性腫瘍になった。しかし、同じマウスで、のどの甲状腺にできたがんの場合は、Rbが二つ、N−rasが一つ欠損すると良性腫瘍ができ、さらにN−rasもすべてなくなると、他の臓器に転移を起こす悪性のがんに変化した。高橋助教授は「N−rasは従来言われていた単純ながんを促進する遺伝子ではなく、組織によって正反対の働きもすることが分かった。 N−rasの機能を制御すればより効果的ながん治療法を生み出せるだろう」と話している。(平成17年12月19日 毎日新聞)

コンタクトレンズの定期検査、保険対象外に 

厚生労働省は、コンタクトレンズ購入後の定期検査や買い替え時の検査について、原則として保険給付の対象から外す方針を固めた。06年4月から実施したい考えだ。定期検査は義務ではないが、同省は推奨し、店頭でも検査を求められるケースが多い。このため、買い替え時などの検査が引き続き行われると、こうした費用は全額、利用者負担になる。一方で、検査を受けずにレンズを購入する人たちが増えることによる安全性の問題を指摘する声もある。14日の中央社会保険医療協議会に示した。同省によると、コンタクトレンズの使用者は約1500万人。使い捨てレンズなどの量販店に隣接して、レンズ処方のための検査に特化した診療所も増えている。平均すると購入時の初診で6610〜7460円、検査などの再診で1900円の医療費がかかっているという。同省は、レンズの購入は医師の処方箋がなくても可能として、買い替えなどの際の定期検査は保険対象外とする方針。レンズを初めて購入する際や、使用中に目の異常を感じたときの検査は、引き続き保険の対象とする。同省は00年、医療関係者に対する安全性情報の中で、自覚症状がないときでも定期検査を推奨。(平成17年12月15日 朝日新聞)

北海道稚内産のけい藻土を使った壁がアトピーに効果

北海道稚内産のけい藻土を使った壁がアトピー性皮膚炎に効果があることが、浜松医科大と大手住宅メーカー、パナホームの研究グループの調査で分かった。浜松医科大病院で稚内けい藻土を使用した病室を作ったところ、患者の症状が改善したという。けい藻土は海中の藻類(植物プランクトン)の死がいが、海底に長年にわたって堆積した粘土状の泥土。同社によると、稚内産のけい藻土は、地層が地圧と熱による圧力を受けたため変質し、細かい気孔が多数できている。このため、他に比べて、調湿性やガス吸着性が優れ、吸湿性は一般の3倍にも上る。同社は03年からリフォーム用建材として、稚内けい藻土をしっくいなどに混ぜて壁に塗布したところ、顧客から「アトピーが治った」との声が寄せられた。このため、同大と協力し、昨年10月から半年間研究した。稚内けい藻土を壁に塗布した病室で、患者6人に2週間入院してもらい、臨床データを測定し、病室外の患者6人と比較した。その結果、ストレスの指標には変化がなかったが、かゆみ、皮膚の発しんなど3項目で改善がみられたという。稚内けい藻土が室内の湿度を抑えたことで、アトピーの原因の一つであるダニ、カビなどを発生しにくくする効果があったとみられる。同大医学部皮膚科の滝川雅浩教授は「アトピー性皮膚炎に悩む人への朗報と考える。改善効果のメカニズム解明を進めていきたい」としている。同社は稚内けい藻土を塗った壁をリフォーム住宅だけでなく、新築にも広げていく方針。(平成17年12月14日 毎日新聞)

国内初のオーダーメード医療部新設

三重大学医学部付属病院は「オーダーメイド医療部」を国内で初めて新設したと発表した。 遺伝子配列の個人差に着目して無駄な投薬を減らしたり副作用や拒否反応を事前に回避したりするなど患者ごとに最適な薬物療法や、生活習慣病の早期診断システムの構築を目指す。 新設部署は遺伝子解析、治療薬物モニター、予防医療、臨床、研究開発、情報管理の6部門で構成する。専任スタッフは置かず、学内の検査部、薬剤部、看護部や付属病院の関連診療科など既設部署が横断的に連携する。(平成17年12月14日 日経産業新聞)

女性の足、太くていい

心臓病にならないためには、減量はしても足は細くしない方がいい。筑波大人間総合科学研究科の大蔵講師らが成人女性を対象に行った健康調査で、そんな結果が出た。腹部の内臓脂肪とは違い、足にある脂肪には心臓病を防ぐ働きがあるらしい。肥満気味の女性のための減量プログラムに参加した128人を対象に、体重や血圧、総コレステロール値などのほか、X線を使った装置で胴体や腕、足の体脂肪量の変化を調べた。減量は食事のカロリーを制限したうえ、有酸素運動を週に3回するなどした。14週間後、参加者の体重は平均で8キログラムほど減った。うち7キロ近くは体脂肪だった。血圧や中性脂肪の値など、心臓病のリスクを予測する指標は、胴体の脂肪がたくさん減るほど改善した。ところが、ももやふくらはぎなど足全体の脂肪については、少ししか減らない人の方がより改善する傾向だった。足の脂肪は平均2.1キロ減っていたが、例えば、脂肪の減り方が30グラム少ないと、最低血圧(拡張期血圧)が1ミリHg(ミリ水銀柱)低くなる計算だという。足の脂肪から、動脈硬化などを防ぐホルモンが出ている可能性が考えられている。大蔵さんは「内臓脂肪を落とすことが大切。健康の面からは『足やせ』はしない方がよさそうです」という。(平成17年12月12日 朝日新聞)

胎盤形成にかかわる遺伝子発見

東京医科歯科大学などのチームは12日、胎盤の形成にかかわる遺伝子を発見したと発表した。生物の設計図であるゲノム(全遺伝情報)のうち不要と思われていた情報の中にある特殊な遺伝子で、この遺伝子を持たないマウスは胎盤が正常にできなかった。生物進化の解明や不妊症研究などに役立つという。 東京医科歯科大、東海大、理化学研究所、三菱化学生命科学研究所のチームは、ヒトやイヌ、マウスなど哺乳類でだけ存在が確認されている遺伝子「Peg10」に着目。この遺伝子がないマウスを作って受精後の胎児の発育を調べたところ、妊娠10日目に胎盤の形成が異常になり成育しなかった。Peg10は、エイズウイルスや白血病ウイルスなどのような細胞内のゲノムに入り込む「レトロウイルス」の遺伝子が変質して出来上がった遺伝子と考えられている。哺乳類のゲノムの3分の1以上は役に立たない不要なごみ情報と見なされているが、その中にある。(平成17年12月12日 日本経済新聞)

HIVが熟年女性に拡大

50歳以降に初めてエイズウイルス(HIV)感染がわかる女性のうち、体調不良などで偶然見つかる場合が4割強に上ることが、エイズ治療の基幹的病院である東京都立駒込病院感染症科の調査でわかった。エイズは性行動の活発な若者の病気というイメージが強いが、調査を担当した看護師は「中高年にも新たな出会いが広がり、リスクが低いとされた熟年以降に感染が広がる懸念もある」と警告している。日本エイズ学会で発表した。1986〜2004年に、同病院でHIV感染が初めて確認された50歳以上の女性は14人で、50歳代が8人、60歳代が6人だった。このうち「夫などのエイズ発症、感染」をきっかけに感染がわかったのは57%。「自分の体調不良」「他の疾患の治療」がそれぞれ21%と、自ら進んで検査を受けた例はなかった。 閉経前後の女性は、寝汗、微熱などのエイズ関連症状を加齢に伴うものと医師も本人も判断しがちで、見落とされる可能性があるという。50歳を過ぎた女性のHIV感染は、日本ではまだ少ないが、欧米では増加傾向にある。感染予防に有効なコンドームも閉経後は「妊娠しないから」と使用継続が難しいのが実情だ。(平成17年12月12日 読売新聞)

インスリンの"出口"発見 分泌不全の糖尿病治療に

膵臓から分泌されるインスリンの量を"出口"部分で調節するタンパク質を山縣和也大阪大助手(内分泌・代謝内科学)らが見つけ、米医学誌セル・メタボリズムに7日、発表した。 糖尿病の新たな治療法につながる可能性があるという。 山縣助手らは、特定の遺伝子変異が原因でインスリンの分泌が著しく悪い糖尿病の膵臓細胞と正常な細胞を比較、従来腎臓だけで見つかっていた「コレクトリン」というタンパク質が膵臓にも存在するのを確認した。 マウスの実験で、このタンパク質はインスリンの分泌量に応じて増減していることが分かり、細胞膜の近くで細胞外に放出するインスリン量を調整していることを突き止めた。 山縣助手は「飲む薬でコレクトリンを増やすことができれば、インスリン注射と比べ患者の負担を減らせる」と話している。(平成17年12月7日 中国新聞)

鶏肉や卵の加熱「70度以上で」

国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)は5日、鶏肉や卵は70度以上の高温で十分火を通せば鳥インフルエンザに感染する心配なく食べられるとの声明を発表した。 感染が広がっている地域で生産された家きんの肉や卵を生や半熟で食べないよう警告している。人間に感染する危険が高いのは死んだ鶏を始末したり鶏を食肉処理する時。 感染した鶏の肉や卵が市場に出回り、消費者が危険にさらされる可能性は小さいが、十分加熱して調理すれば、さらに安全性は高まるとしている。(平成17年12月10日 日本経済新聞)

肝がん患者 生存期間2倍に

肝臓がんの治療で、病巣部への強力な放射線の集中照射と抗がん剤投与を組み合わせることで、患者の生存期間を大幅に延ばすことができることを米ミシガン大学の研究チームが確認し、米医学誌に発表した。研究チームは、手術できない肝臓がん患者128人に対し、カテーテル(細い管)で肝臓に直接、抗がん剤を投与。同時に、がん細胞に放射線を集中させるため、様々な角度から照射する「三次元照射」という放射線治療を行った。照射は1日2回、2週間続けた。その結果、患者の平均の生存期間は15・8か月と、従来の進行がん患者の平均8〜9か月に比べ、向上した。副作用がみられたのは3分の1以下だった。多くの血管が集まる肝臓は、放射線に敏感で、重い副作用が出るなど放射線治療が難しいとされてきた。(平成17年12月5日読売新聞)

インフルエンザ、今冬はA型流行か

今年も各地でインフルエンザの患者が出始めた。昨シーズンにB型が大流行したため、今シーズンは免疫を持つ人が増えたB型より、A型が流行の主流になるとみられる。なかでもA香港型は短期間で多くの人がかかる可能性があり、専門家は注意を呼びかける。東京都は、「今冬はA型(Aソ連、A香港)を中心とした流行となる」とのインフルエンザ流行予想を公表している。昨シーズンに全国で分離されたウイルスをみると、例年半分以上を占めるA型が少なく、B型が56%を占めた。B型が半分を超えたのは8シーズンぶりだった。この結果、今年は例年になくB型の免疫を持つ人が多いとみられている。都による免疫の有無を調べる検査でも、過去15年でB型の抗体保有率が2番目に高く、A型は平年並みだ。国立感染症研究所感染症情報センターの安井良則主任研究官も「過去20年間、B型が2年連続で大流行を起こしたことはない」としている。インフルエンザウイルスは表面のたんぱく質が少しずつ変異するため、ワクチン用に次シーズンに流行しそうな株を同研究所が予想し、厚生労働省が決めている。今冬は、Aソ連型の「ニューカレドニア株」、A香港型の「ニューヨーク株」、B型の「上海株」の3種類だ。A型の中でも香港型が流行すると、若い元気な人もかかり、重症化する可能性がある。特に高齢者や小さい子どもは流行前にワクチンを受けておいてほしい。 不要な外出を避け、うがい、手洗いや規則正しい生活も忘れずに(平成17年12月2日 朝日新聞)

70−74歳の医療費窓口負担2倍に

政府・与党は1日の医療改革協議会で、患者負担増や75歳以上が入る独立保険の創設などを盛り込んだ医療制度改革大綱を正式に了承した。医療費の患者負担は2006年10月から段階的に引き上げ、2008年度には70―74歳の窓口負担が原則として現在の2倍になる。骨折の場合で同年代の負担額は2万4000円と今より1万2000円増える。政府は来年2月中旬をメドに関連法案を通常国会に提出する方針だ。まず来年10月に70歳以上の高所得者(夫婦で年収621万円以上)を現在の2割から3割に引き上げ、2008年度には高所得者を除く70―74歳を1割から2割に変える。また地方の個人住民税が非課税となっている低所得者を除き、高額医療費の自己負担上限を来年10月から引き上げる。最も影響が大きいのは70―74歳。低所得者の負担は変わらないものの、それ以外の所得層は軒並み負担増になる。例えば夫婦で年収620万円以下の一般所得者が風邪で1回診察を受けた場合、現在500円の窓口負担は2008年度には1000円に増える。(平成17年12月2日 日本経済新聞)

心臓マッサージ「強く、速く」

心臓発作などで突然倒れた人を救うための初歩的な蘇生(そせい)法について、米国心臓協会(AHA)は3日までに、心臓マッサージの有効性を強調した2005年版ガイドラインを発表した。5年前の旧ガイドラインでは、人工呼吸2回の後に心臓マッサージ15回のセットを繰り返すとされていたが、今回の改訂で、人工呼吸2回に対しマッサージを倍の30回に増やした。同協会によると、最近の研究で、間隔を置かずにマッサージを続けた方が血流が回復しやすいことが分かったといい、胸を「強く、速く」押すよう推奨している。 この蘇生法は「CPR」と呼ばれ、たまたま現場に居合わせた人でも簡単に行えるよう工夫されたもの。同協会は国際的なガイドライン作成の中心的な存在で、日本でも新ガイドラインが普及するとみられる。(平成17年12月3日 日本経済新聞)

内臓脂肪症候群、日本人の8%

動脈硬化などにつながるとされる状態「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)になっている人は、20歳以上の日本人の約8%を占めると推定され、小食や運動、禁煙、趣味によるストレス解消など健康的な生活習慣を多く持つ人ほどこの状態に陥る率は低いことが、東京慈恵会医大(東京都港区)健康医学センターの和田高士センター長らの研究で分かった。 大阪市で開催中の日本脈管学会で2日に発表する。メタボリックシンドロームは、男性はウエスト85センチ以上、女性は90センチ以上で、さらに(1)中性脂肪などの異常(2)高血圧(3)高血糖−−のうち2項目以上を満たす状態だ。それぞれの異常は軽くても、重なることで動脈硬化を起こしやすくなるという。和田センター長らは、00年1月から04年12月までの5年間に、同大で人間ドックを受けた男女計2万2892人について、メタボリックシンドロームだったかを調べた。 同時に「禁煙」「過食をしない」「飲酒は日に1合以下」「週に1回以上運動する」「仕事をしない日が月に6日以上ある」「打ち込める趣味がある」の6項目の「よい生活習慣」について、それぞれ実行しているかどうかをアンケートした。日本人の年齢分布などを考慮して結果を分析すると、メタボリックシンドロームの人は、成人男性の14%、成人女性の2.9%、平均では8.4%と推定された。「よい習慣」の実行数別にみると、受診者のうち、一つも実行していない人は、シンドロームに陥っている率が約21%に達した。しかし、実行数が一つ増えるごとに、率は2ポイント余り低下し、六つとも実行している人は7.2%だった。和田センター長は「メタボリックシンドロームは、生活習慣の改善でかなり防げる。高血圧など個々の異常を薬に頼って治す前に、複数の異常の共通原因となる生活習慣を変えてほしい」と話している。(平成17年12月2日 毎日新聞)

エボラ出血熱、コウモリが媒体か 

アフリカで散発的に流行が繰り返され、致死率は90%にも達する感染症のエボラ出血熱は、現地で食用にもされるコウモリが広めている可能性があることが30日、明らかになった。ガボンなどの国際チームが、症状が全くない3種類のオオコウモリからエボラウイルスの遺伝子や抗体を検出し、12月1日付の英科学誌ネイチャーに論文を発表した。エボラウイルスの自然宿主や感染ルートは謎だったため、有効な予防策が取れなかった。チームは「コウモリが感染源なら、食用を避けることで人への直接感染を大幅に減らせる可能性がある」と指摘している。(平成17年12月1日 毎日新聞)

白内障にかかわるたんぱく質の構造観察に成功

京都大学理学研究科の藤吉好則教授らは、目の水晶体(レンズ)が白く濁って視力障害を引き起こす白内障の発症に関係するたんぱく質の構造を、電子顕微鏡で観察することに成功した。水晶体の細胞をどのように接着しているかが分析できるようになり、白内障が起きる仕組みの解明につながる。12月1日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。電子顕微鏡で立体構造を観察したたんぱく質は「アクアポリン0」。水晶体の細胞にあって細胞同士を接着すると同時に、水分の通り道にもなる。研究グループは試料を生きたままの状態で見ることができるように炭素の膜で挟む新手法を開発して、観察することに成功した。0.19ナノメートルという分解能(2つの点を見分けることができる最小距離)で、アクアポリン0の詳細な構造がわかるようになった。白内障は水晶体の細胞同士の接着力が弱まったり、水分の通りが悪くなったりして起こるのではないかという説があり、アクアポリン0の構造がわかれば、白内障の発症の仕組みが明らかになるのではないかと期待されている。(平成17年12月1日 日本経済新聞)

新型インフルエンザ、あらゆる型への対応目指す

科学技術振興機構は29日、新型インフルエンザの拡大に備え、あらゆるタイプのウイルス診断薬やワクチン開発を進めるための体制づくりを支援することを決めた。3年間に約1億円を投じ、この問題で世界の中核施設になっている北海道大人獣共通感染症リサーチセンターが世界に先駆けて完成を目指す。インフルエンザウイルスは、表面に分布する2種類の分子の型から144通りのタイプが存在する。このため、個々のウイルスに対応したワクチン開発が急がれている。センター長を務める喜田宏・北大教授は約30年前から、米アラスカやモンゴルなど世界中からウイルスを採取してきたほか、実験室でも作ってきた。その結果、ウイルスの型全体の約9割が保存され、世界保健機関などは同センターをウイルス対策の中核的な研究機関に位置づけている。今後、研究チームは保存されたウイルスを活用して、発病を防ぐワクチン開発のほか、ウイルスに感染した細胞が死んでしまうのを防ぐ薬剤開発にも取り組む。(平成11月30日 朝日新聞)

大動脈瘤、原因たんぱく質の異常究明

破裂すると大出血して多くの患者が死亡する大動脈瘤(りゅう)の原因となる細胞内のたんぱく質の異常を、山口大学医学部の松崎益徳教授、青木浩樹助教授らのグループが突き止めた。動物実験でこのたんぱく質の働きを抑える薬を与えると大動脈瘤が縮小したといい、同グループは「薬剤による治療の道が開けた」としている。成果は米医学誌「ネイチャー・メディシン」12月号に発表される。腹、胸部などにできる大動脈瘤は、血管の壁が弱くなり、血圧に押されて風船のように膨らむ病気。コラーゲンなど血管壁をつくる材料が分解されやすくなったり、材料を合成する能力が落ちることが血管壁を弱くすると考えられている。病気の進行を遅らせる薬は登場しているが、根本治療には患部を人工血管に置き換える手術が必要で、患者の負担も大きい。 松崎教授らは、患部で血管壁の材料を分解する酵素が増え、逆に材料を合成する酵素が減少することを確認。その原因が「JNK」というたんぱく質の働きが異常に高まることにあると考えた。大動脈瘤を持ったマウスにJNKの働きを抑える薬を与えたところ、血管壁をつくり直す能力が回復し、大動脈瘤が小さくなったという。研究グループは臨床応用に向け、さらに効果的な薬や投与法を開発中。松崎教授は「手術しか方法がなかった動脈瘤を薬で小さくできれば、治療の選択肢が広がる」と話している。(平成17年11月28日 毎日新聞)

アルツハイマー抑止に光、原因物質防ぐ化合物開発

アルツハイマー病の発症にかかわる体内物質「β(ベータ)アミロイド」の生成を防ぐ化合物を、木曽良明・京都薬科大教授と東京大、理化学研究所のグループが開発し、マウスの実験で効果を確認した。28日から大阪市で始まる日本薬学会の「メディシナルケミストリーシンポジウム」で発表する。アルツハイマー病は、大脳皮質にβアミロイドが蓄積し、神経細胞の維持に必要なたんぱく質の働きを妨げるのが直接原因と見られている。木曽教授によると、βアミロイドは、前段階のたんぱく質が2種類の酵素で切断されて生成する。このうち「γ(ガンマ)セクレターゼ」という酵素は動物の発生・分化に欠かせないが、「βセクレターゼ」は作れなくてもマウスに異常が見られないため、その作用を阻害する化合物を設計した。これを、脳内で記憶に関係する海馬という部位に注射した結果、遺伝的にアルツハイマーになりやすいマウス、野生のマウスの両方で、βアミロイドの生成が約半分に抑えられたという。木曽教授は「根本的な治療薬の開発につながる可能性がある。実用化に向けて動物実験で検証を重ね、経口投与できるよう改良したい」としている。(平成17年11月28日 読売新聞)

人工食道、ぜん動運動が可能 

食べ物を胃に送る蠕動運動が可能な人工食道の開発に、病態計測制御分野が専門の山家智之・東北大加齢医学研究所教授らの研究グループが成功した。内視鏡での手術が可能になるため患者への負担が軽く、食道がん患者への治療法として5年以内の実用化を目指す。同グループは24日、特許庁に特許申請した。山家教授らは、熱を加えると縮まる形状記憶合金の輪を利用。食道のぜん動運動の仕組みを参考に、この輪を1センチ間隔に配列し、規則的に縮めたり緩めたりすることで、食べ物が一定方向に進むようにした。輪を温めるための磁気コイル(長さ約5センチ)を胃の中に置き、外部から別の磁気コイルを当ててエネルギーを供給。輪は新たに開発したポリビニールアルコール(PVA)の管にくくりつけた。PVAの摩擦係数は通常の人工臓器用シリコンの1割で、食べ物をスムーズに送ることが可能だ。さらに、人工食道を設置するため食道を広げるステント(管)も、外から電磁気を当てると温まる素材を開発。温めることで、熱に弱いがん細胞を殺すことができ、治療につながるという。 食道がんは国内で年間1万人がかかるとされている。胸や腹を開くなど大掛かりな手術が必要で、切除できない場合は食べ物を飲み込めるよう金属製ステントを設置する治療をしてきたが、不都合も少なくなかった。山家教授は「胆道や尿道、大動脈などの手術への応用も考えていきたい」と話している。(平成17年11月25日 毎日新聞)

子供襲うインフルエンザ脳症、「疑い」も早期治療を

乳幼児に多く、死亡率が高いインフルエンザ脳症について、医師向けの初の診断・治療指針を厚生労働省の研究班(主任研究者=森島恒雄・岡山大教授)が作った。発症1〜2日目に治療を始めれば、死亡や重度の後遺症を大幅に減らせるとして、疑わしい段階でも抗ウイルス薬「タミフル」の服用やステロイドの短期集中投与をすぐに始めることなどが柱だ。家族にとっても対応などの参考になりそうだ。初期対応、診断指針、治療指針などの5項目で構成。初期対応では、明らかな意識障害がある場合、かかりつけ医らは救急対応ができる大規模な医療機関へ患者をすぐに紹介する、とした。けいれんや異常言動・行動は、脳症以外でも起きる。そこで、けいれんの持続時間が長く、左右非対称の部位で起きる場合は、大規模病院へすぐに紹介する。短時間で単純なけいれんの場合は、様子を1時間程度は見て、意識障害がないと確認できなければ紹介する。異常言動・行動が断続的でも1時間以上続く場合は同じだ。親が子どもをすぐに高度な医療機関へ連れて行くべきかの目安にもなる。 送られた医療機関は意識障害の程度や頭部CT検査で診断。インフルエンザ脳症と確定できない疑い例でも、治療を始める。体温が41度以上、下痢がある、症状を悪化させる一部の解熱剤を使用した、などの場合は特に注意が必要としている。治療では、ウイルスの増殖を抑えるタミフルを投与し、炎症を抑えるステロイド薬「メチルプレドニゾロン」の短期集中投与などを実施する。約200人を対象にした調査では、ステロイド投与は発症3日目以降に開始しても約8割の患者が死亡または重度後遺症を残してしまうが、1日目に始めれば、ほぼゼロに、2日目なら半分程度になる。タミフルは服用後の異常行動による死亡例が報告されているが、森島さんは「因果関係がはっきりしない。異常行動は脳症でよく見られる症状でもあり、タミフルが重症化を防ぐと期待される」とする。(平成17年11月25日 朝日新聞)

小学生のアトピー、昼休みシャワーで改善

アトピー性皮膚炎の小学生に学校の昼休みに数分のシャワーを続けてもらったところ、症状が大幅に改善したことが厚生労働省研究班の調査でわかった。アトピー性皮膚炎は10数%の小学生が悩んでおり、近年治りにくくなっているともいわれる。体育などで汗やほこりが皮膚に付いて、刺激でかゆみが増し、繰り返しひっかくことも悪化の原因の一つと考えられている。そこで、昨年と今年、症状が悪化しがちな6〜7月の6週間に、群馬県内の小学校7校の協力を得て、アトピー性皮膚炎の児童延べ53人(平均8.8歳)を対象に、平日の昼休みに3〜5分ほど温水のシャワーを学校で浴びてもらい、効果を調べた。いずれも症状が安定している児童で、期間中は治療内容を変更しなかった。全身を25の部分に分け、場所ごとに強い症状は2点、弱い症状は1点、症状なしは0点と、計50点満点で評価したところ、全員が改善し、シャワー実施前は平均11.2点だったのが6週間後には4.0点と、7.2点も症状が軽くなった。(平成17年11月20日 朝日新聞)

インフルエンザのウイルス除去装置

三洋電機と群馬県環境衛生研究所は空気中のインフルエンザウイルスを除去できるフィルターユニットを開発した。 電解水を滴らせたハチの巣構造に似たフィルターに空気を通過させてウイルスを吸着し殺滅する仕組み。 インフルエンザの大流行が心配される中で「なるべく今冬中に実用化したい」(三洋)という。 ユニットは水道水を電気分解し電解次亜塩素酸を発生。この電解水をフィルターの上から滴らせ、空気中に含まれるウイルスをとらえる。 フィルターの断面の一辺が2―3ミリメートルの三角穴を多数組み合わせたハチの巣構造に似た仕組みにし空気と接する表面積を広げた。 県衛生研究所によるインフルエンザウイルスの除去試験では、99%の除去を確認したという。 衛生研はスギ花粉などにも有効とみている。三洋がユニットを開発、衛生研が効果測定などで協力した。 大規模空間の浄化に活用できるのが最大の特徴という。学校の教室や病院などでの活用を想定している。(平成17年11月24日 日経産業新聞)

ぜんそく薬「テオフィリン」、乳幼児の使用制限へ

気管支ぜんそくや気管支炎の治療薬として国内で年間40万人以上に処方される「テオフィリン」の使用後に、乳幼児が重いけいれんや脳症を起こすなどの報告が相次ぎ、日本小児アレルギー学会は、小児気管支ぜんそく治療指針に5歳以下への使用制限を盛り込むことを決めた。新潟市民病院の医師らは、服用後に重いけいれんや脳症で運ばれた子供が1991〜2002年の間に54人おり、うち2人が死亡したと、03年10月の日本小児科学会誌に報告した。また、大阪市立総合医療センターの塩見正司・小児救急科部長によると、98〜04年に同センターに運ばれた服用後の子供のうち、11人に知的障害などが残り、別に1人が点滴による過剰投与のせいで死亡した。代表的なメーカーの三菱ウェルファーマの集計でも、シロップ剤を発売した93年以降、5歳以下でけいれん約160例、重症けいれん約80例、後遺症約20例の報告がある。テオフィリンは、治療に有効な血中濃度の値と、けいれんなど副作用の危険が高まる値が近く、薬の添付文書では血中濃度を測りながら使うよう求めている。日本小児アレルギー学会の新たな治療指針では、テオフィリンは第一選択にはせず、追加の治療で検討する薬とし、「ぜんそく治療に精通した医師が注意深く使うべきだ」とした。特に2歳未満には、最後の選択肢として使用を極力制限する。なかでも座薬は血中濃度が急激に上がる危険性が指摘されているため、「推奨しない」とした。指針作成委員長の森川昭広・群馬大教授の話「重いけいれんとの因果関係を示す十分な証拠はないが、体質的にけいれんを起こしやすい乳幼児への投与は、慎重になるべきだと判断した」(平成17年11月18日 読売新聞)

高脂血症薬に心臓病防ぐ効果 日本で8千人臨床試験

コレステロール値を下げる高脂血症薬を使うと、日本人で心臓病の発生を減らす効果があることが、約8000人の患者が参加した臨床試験で分かった。日本人を対象にこの薬を使う人と使わない人を比べた大規模臨床試験は初めて。中村治雄・防衛医科大名誉教授らが16日、米テキサス州ダラスで開かれた米国心臓協会学術集会で発表した。中村さんらは総コレステロール値が220〜270ミリグラム(血清1デシリットル当たり)の男女7832人(平均年齢58歳)の協力を得て、全員に食事療法をしたうえで、半分の人にはコレステロールを下げる薬を飲んでもらった。5年以上経過を追った結果、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓病を起こす発症率は、薬を飲んだ場合が飲まない場合に比べて33%少なかった。これに脳梗塞を加えた動脈硬化性の病気全体の発症率でみても30%減った。今回の臨床試験で使われたのはメバロチンという高脂血症治療薬で、日本では89年、三共が発売し、医師が処方する薬として広く使われている。欧州で実施された大規模臨床試験では心臓病を予防する効果が確かめられてきた。欧米に比べて日本では心筋梗塞などによる死亡率が低く、食生活も違うため、日本人にも病気を防ぐ効果があるのかを厳密な臨床試験で確かめる必要があるとされてきた。(平成17年11月17日 朝日新聞)

魚の油、心臓病予防に効果 2万人規模の研究で確認

イワシやサバなどの青魚に多く含まれる油の成分をとると心臓病になるのを減らす効果があることが、日本人約2万人を対象にした大規模臨床試験で確かめられた。横山光宏・神戸大教授(循環器病学)らが、米テキサス州ダラスで開催中の米国心臓協会学術集会で14日、発表した。横山さんらは総コレステロール値が250ミリグラム(血清1デシリットル当たり)以上の男女1万8645人を対象にした。全員にコレステロールを下げる薬を処方した上で、半数の人には魚の油成分、イコサペンタエン酸(EPA、エイコサペンタエン酸ともいう)を抽出した高純度のカプセル薬も毎日飲んでもらった。約5年間の追跡期間中に心臓突然死や心筋梗塞(こうそく)などの心臓病が起きた人の割合は、EPA薬を飲まなかった人では3.5%、飲んだ人では2.8%。EPA薬の服用には、こうした心臓病のリスクを19%減らす効果があったという。 日本では欧米に比べて心筋梗塞などの死亡率が低い。魚を多く食べる食生活が一因と指摘されていたが、大規模な臨床試験で確かめられたのは初めて。今回の臨床試験に使われた薬はすでに、高脂血症などの治療薬として医療現場で医師が処方している。(平成17年11月16日 朝日新聞)

RNAでがん抑制、動物実験成功 

がんの増殖にかかわる遺伝子の働きを止める物質を、微小なカプセルに入れて患部に送り込み、がんを抑える動物実験に東京大学の永井良三教授と協和発酵工業のグループが成功。新たながんの治療法の開発につながりそうだ。永井教授らは、動脈硬化やがんの増殖にかかわる「KLF5」という遺伝子を02年に発見、この働きをリボ核酸(RNA)で抑えられないかと考えた。RNAは、細胞の中でDNAの遺伝情報を写し取り、たんぱく質をつくる時に働くと考えられてきた物質だが、遺伝子の働きを抑えるためにも利用できる。「RNA干渉」と呼ばれ、この現象を使った治療法開発の競争が激しくなっている。グループは、血液中で不安定なRNAを患部にピンポイントで届けるために、直径100ナノメートル(ナノは10億分の1)のリポソームと呼ばれる脂質の膜でできた微小なカプセルを作り、KLF5を抑えるRNAを閉じこめた。このサイズにすると、がんのまわりのもろい血管からカプセルがにじみだし、がんに作用させることができる。がんのマウスに、この薬を与えると、がんに栄養を送る血管が新たにできるのを抑え、がんの増殖も抑えられることがわかった。(平成17年11月15日 朝日新聞)

アルツハイマー病の原因物質の解明に成功

アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質「ベータ・アミロイド」の主要構造をとらえることに、大阪大工学研究科のグループが世界で初めて成功した。高野助教授は「この主要構造が変化すると、ベータ・アミロイドが次々と線維状に固まっていき、病気を引き起こす」と推測。この変化を防ぐ化合物を見つければ、治療薬につながると期待している。ベータ・アミロイドは、線維状に固まりやすい性質が災いし、構造解析に適した結晶状態にするのが難しかった。高野助教授らは、線維化に関係すると見られている部分を、構造分析に適した別のたんぱく質に組み込む手法で、エックス線による解析に成功。この部分が折り畳まれて平面状になった形をしており、非常に分解されにくい構造であることが分かったという。ベータ・アミロイドは、正常な脳では酵素によって分解されるが、分解できなくなると、蓄積して「老人斑」という線維状物質を形成、アルツハイマー病を引き起こすと考えられている。(平成17年11月16日 読売新聞)

後発品の普及へ

厚生労働省は、医療費抑制の柱の一つとなる薬剤費の抑制案をまとめた。特許が切れた新薬(先発品)と同じ有効成分で売り出される安価なジェネリック医薬品(後発品)の使用を増やすため、医師の処方箋(せん)を変更することや、後発品がある先発品の価格の下げ幅を大きくする案を盛り込んだ。社会保障審議会医療保険部会に案を示した。後発品は患者負担も減るため厚労省が普及策をとってきたが、市場での割合は03年度で16%(数量ベース)。50%前後の欧米よりかなり低い。厚労省案では、処方箋に新たに「後発品へ変更可」「変更不可」のチェック欄を設け、医師が先発品名で処方しても、「変更可」にチェックすれば患者は後発品を選べるようにする。 後発品が出た場合の先発品の価格については、従来4〜6%引き下げていたが、さらに下げ幅を拡大する案と、後発品の市場価格に連動して先発品価格が下がる案を示した。ただ、財務省や与党の一部が提案する市販薬に類似した医薬品を保険対象外などとする案については「適用範囲を決めるのが難しい」とした。また厚労省は診療報酬改定について、小児科や救急医療など必要な分野への配分の必要性や、コンタクトレンズの処方に伴う検査のあり方を見直す考えなども示した。(平成17年11月14日 朝日新聞)

一定所得の高齢者3割負担に

06年度から実施する医療制度改革案を取りまとめる政府・与党医療改革協議会の2回目の会合が14日、首相官邸で開かれ、70歳以上の高齢者の窓口負担について、一定以上の所得がある人については現行の2割から3割に引き上げることで合意した。患者負担引き上げのうち、長期入院している療養病床患者に食費・居住費の負担を求める案についても異論はなく、基本的に了承された。いずれも06年10月から実施される見通しだ。一定以上の所得は、高齢者夫婦世帯の場合で、現在年収約620万円以上だが、06年からは制度改正で約520万円以上に変わるため、70歳以上の約11%(約200万人)が対象となる見込みだ。現在原則1割となっている70歳以上の一般の高齢者の窓口負担を一律2割に引き上げる案などには、与党側から「高齢者の多くは年金受給者であり、配慮が必要」と異論が出た。 長期入院患者の食住費自己負担は、厚労省が示した標準的なケースでみると、現在の食費の自己負担は材料費の月2万4000円だが、新たに調理コストが上乗せされ計4万6000円に。これに居住費として光熱水費相当の1万円も加わり、計3万2000円の負担増になる。介護保険制度の改正で、今年10月から介護保険での施設入所者の食住費が自己負担となっており、対応を合わせる。ただ、食住費負担を一般病床にも拡大する財務省の主張については、与党側から「慎重であるべきだ」との意見が出た。医療費の一定額を保険給付の対象から外す保険免責制度に対しては与党側から強い異論が出され、見送られる方向だ。一方、高齢者を対象にした新たな医療保険制度については、運営主体を市町村としていることから竹中総務相が「市町村の負担が重すぎる」と懸念を表明。ただ、与党側から「中長期的には避けて通れない課題だ。これを抜きにして改革したとは言えない」との意見も出された。 公明党は少子化対策の観点から、医療保険から給付される出産・育児一時金を大幅に増額することを提案。さらに予防対策の充実として、たばこ税を増税して健康増進の費用に充てることを求めた。(平成17年11月14日 朝日新聞)

新高齢者医療保険の検討

厚生労働省は医療制度改革で2008年度の新設を目指している高齢者医療保険について、財政基盤を安定させるために再保険制度をつくる検討に入った。新保険は市町村が運営するが、一定額以上の高額医療費は再保険の形で都道府県と国が負担する。都道府県ごとに基金も設置し、保険料の未納などで資金繰りが悪化した市町村に資金を貸す仕組みもつくる。厚労省は先月公表した医療制度改革試案で、高齢者保険の創設を医療費抑制策の柱に位置づけた。高齢者は今は現役世代と同じ医療保険に加入しているので、医療費がかさんでも本人の保険料負担には直接響かない。そこで現役世代とは別に75歳以上の人だけが入る保険を市町村単位でつくり、地域の医療費が増えると高齢者の保険料負担も重くなる仕組みで過度の診療を減らす考えだ。(平成17年11月13日 日本経済新聞)

高齢者の長期入院、調理・光熱費を自己負担

政府・与党は12日、医療給付費抑制策として、治療のため療養病床に長期入院する70歳以上の高齢者の食費・居住費の一部を保険適用外の自己負担とする方針を固めた。調理の経費と光熱・水道費が対象。12月上旬に策定する医療制度改革に関する大綱に盛り込み、2006年の通常国会に関連法案を提出して同年10月からの実施を目指す。 療養している高齢者の入院費用は現在、食費のうちの食材費は自己負担だが、治療費や居住費は保険対象で1割負担となっている。しかし、自宅で介護を受けたり、療養したりしている人は通常、食費・居住費とも全額を負担している。公平性を保つため、先の通常国会では、療養病床の入院者で介護を受けている人については、05年10月から調理費や光熱・水道費を自己負担とする介護保険法の改正が行われた。今回の措置は、治療のため療養病床に入院している人についても、対応をそろえるのが目的だ。食費のうち、献立の決定などの栄養管理の費用は、保険適用を維持する方針だ。厚生労働省が10月にまとめた医療制度改革の試案の中で、こうした方向を打ち出していた。同省は、月に2万4000円の食材費と他の費用の1割で計6万4000円を支払っている人のケースで、調理費の2万2000円と光熱・水道費の1万円が上積みされ、自己負担が9万6000円に増える試算を示している。最終的な増額幅は個別のケースで異なるが、低所得者には、自己負担の一部免除などの救済措置を設ける方針だ。(平成17年11月13日 読売新聞)

食欲抑制ホルモン、ラットの胃で発見

食欲を抑制する作用がある新たなホルモンを米スタンフォード大のチームがラットの胃で発見、「オブスタチン」と名付け、11日付の米科学誌サイエンスに発表した。オブスタチンは、日本で発見された食欲促進ホルモン「グレリン」ともとになる遺伝子が共通なのに、機能はほぼ正反対。こうした例は非常に珍しい。二つのホルモンの役割を解明することで、先進各国で深刻な問題になっている肥満の治療薬開発につながる可能性がある。チームはグレリンの遺伝子や、グレリンのもとになる前駆体のアミノ酸配列を、人間やマウスなど約10の哺乳(ほにゅう)類について調べ、同じ遺伝子からグレリンとは別のタンパク質がつくられている可能性が高いと予測。そしてラットの胃から予測通りにオブスタチンを発見した。合成したオブスタチンをラットに注射したところ、餌を食べる量が減ったうえ、消化にも時間がかかり、体重増加のスピードが鈍くなった。人間でも同様の効果があるかどうかの確認はこれからだという。(平成17年11月12日 毎日新聞)

40〜64歳の末期がん患者、介護保険対象

厚生労働省は、40〜64歳の末期がん患者に対する介護保険の適用範囲について、すべてのがんを対象にするとともに、「末期」かどうかの判断は、医師が「治癒困難・不可能」と診断した場合とする方針を決めた。 余命期間や、がん告知の有無などは問わない。医師ら専門家による研究班の検討結果を受けたもので、関係政省令を改正し、2006年4月から給付対象に付け加える。現行制度では、介護保険を利用できるのは原則65歳以上。40〜64歳は、初老期の認知症(痴呆(ちほう))など、加齢に伴う15種類の特定疾病に限定され、この中にがんは含まれていない。しかし、在宅の末期がん患者の間からは介護保険の適用を望む声が強く、政府・与党は今年2月に、末期がんを特定疾病に加える方針を決定。がんの種類や末期の定義をどうするかが懸案事項となっていた。同省では、がんを一つの疾患としてとらえた場合に、発症の状況などから、乳がんや子宮がんなども、「加齢に伴う疾病」と考えられると判断。また、余命期間を正確に予測することは困難であることから、進行性のがんで、医師が総合的に治癒が困難あるいは不可能と診断すれば、給付対象とすることが適当とした。(平成17年11月12日 読売新聞)

人工透析、負担上限引き上げ

厚生労働省は11日、人工透析を受けている慢性腎不全の患者のうち、月収53万円以上の人の自己負担上限を、月1万円から2万円へ引き上げる方針を自民党に示した。異論がなかったことから、厚労省は来年10月から実施したい考えだ。透析の必要な患者約25万人のうち、約1割にあたる2万5000人が負担増の対象となる見通し。透析患者は毎年1万人のペースで増えており、抑制が必要と判断した。患者団体は反発している。透析患者にかかる医療費(患者負担を含む)は推定約1兆円で、国民医療費の約30分の1を占めると見られる。例えば透析者数のうち約7万人を占める糖尿病患者では、1人あたり年約550万円の医療費がかかっている。人工透析は、自己負担額が一定額を超えた分を還付する高額療養費制度の特例により患者の負担上限は月1万円に抑えられ、残りは医療保険から支給されている。厚労省によると、透析技術の進歩で患者が働きやすくなり、高い収入を得る人も増えてきた。また、1万円に設定された透析患者の負担上限が84年から変わらず、一般の高額療養費制度では約2.6倍になっていることも考慮した、という。(平成17年11月12日 朝日新聞)

禁煙治療に保険適用へ

厚生労働省は8日、医師による禁煙指導を「治療」と位置づけ、公的医療保険の給付対象とする方針を固めた。 禁煙指導の促進により、喫煙率は今後15年間で最大、男性26%、女性9%程度まで下がると同省研究班は試算。肺がんをはじめ、心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病を引き起こすとされる喫煙を減らすことで、15年後の医療費は少なくとも約1846億円抑制できるとみている。禁煙はこれまで個人の意志や努力の問題とみられてきたが、「ニコチン依存症」という病気に対する治療ととらえて、積極的な対策に乗り出す。9日の中央社会保険医療協議会(中医協)で提案する。保険を適用する治療内容を検討し、06年4月の実施をめざす。対象は、禁煙治療プログラムを受けたいと希望する人で、ニコチン依存度テストで「依存症」と判定された人。同省のモデルでは、2または4週間に1回通院してカウンセリングを受けるほか、肌にはったパッチからニコチンを吸収する置換療法を受ける。約3カ月で初診も含め計5回ほどの通院を想定している。これまでも、一部の病院が独自に「禁煙外来」を設けていたが、保険の対象ではないために全額が患者負担で、1カ月あたり3万〜4万円かかっていた。保険の対象になれば、3割の窓口負担(70歳以上は1〜2割負担)で済むようになる。次期医療制度改革で厚労省は、生活習慣病対策で中長期的に医療費の伸びを抑制する方針を打ち出しており、禁煙治療の促進はこの一環。導入によって医療費は当初は増えるものの、生活習慣病や肺がんが減ることに伴う減少で、8年目から減少に転じると研究班では試算している。欧米ではすでに、ニコチン依存症を「繰り返し治療することで完治しうる慢性疾患」ととらえる動きが広がっている。英国では99年から禁煙治療を保険の対象としているほか、米国でも民間保険会社の8割超が禁煙のための薬剤費などを保険給付の対象にしているという。日本では、日本循環器学会など9学会が保険適用を要望していた。(平成17年11月9日朝日新聞)

紹介状ないと、大学病院は保険対象外

厚生労働省は9日、06年度診療報酬改定で、病院(20床以上)より診療所(20床未満)に対し高く設定している初診料を一本化し、現行水準よりも引き上げる考えを中央社会保険医療協議会の小委員会に示した。 病院の引き上げ幅を大きくし、外来患者を病院から診療所にシフトさせるのが狙い。診療報酬総額は引き下げる一方、メリハリをつける同省の改定方針に沿ったものだ。値上げ幅は今後詰めるが、実現すれば来年4月以降、診療内容によっては患者負担がアップする。病院は現在、初診料が2550円、再診料は580円なのに対し、診療所は初診料2740円、再診料730円と格差がある。病院が外来患者を診た場合の収入を低くし、患者を診療所に誘導する狙いがあった。しかし、患者が初診料の安い病院に集中するという、当初の想定とは逆の現象が生じていた。次期改定では初診、再診料とも、病院、診療所で一本化し、初診料は引き上げる一方、再診料は下げる。初診料のアップは、あらゆる疾病の可能性を考える必要があるなど、医師の負担が重い初診を重視する考えに基づいているが、患者の受診手控えによる医療費抑制も見込んでいる。また同省は、同じ日に同一病院内で複数の診療科にかかった場合、初診料負担は現在1科分だけだが、それぞれの診療科ごとに初診料を払う制度に改める方針を示した。このほか、大学病院などの大病院に紹介状を持たずに来た患者への初診料を保険対象外とする方針も提示した。大病院は保険外で初診料の上乗せ請求をできるが、実施が3分の1程度にとどまっているため。(平成17年11月9日 毎日新聞)

医師の処分、医業停止上限は3年、免許取り消しも 

医療事故の多発を背景に、厚生労働省の検討会は9日、医師の行政処分について医業停止期間の上限を3年とし、それを超えるような事案は医師免許を取り消す方向で一致した。これまで医業停止は上限5年で運用されており、事実上の厳罰化となる。厚生労働省は検討会の結論に沿った形で、医師法など関連法令を改正する方針。医師の行政処分は刑事罰が科されたり、医療ミスを起こしたケースが対象で、医業停止と免許取り消しの二つがある。検討会は免許取り消し後、短期間で免許の再交付を受けられないようにするため、5年間は再交付申請できないとすることでも一致した。さらに行政処分をするうえで事実関係を調査する権限を厚労省の部署に与えることも提言した。現状は任意の調査のため、病院側からの事情聴取や資料提出が拒否され、事実の解明に支障が出ている。調査権限は重大な不正の恐れがある場合に限定し、調査に協力しないケースは、罰則を科すべきだとしている。(平成17年11月9日 毎日新聞)

前立腺がん、ホルモン療法長期が有効

放射線治療を受けた進行性の前立腺がん患者に対し、長期にホルモン療法を併用すると、短期のホルモン療法の併用に比べ、生存率が向上することがカナダの医療チームの研究でわかった。米医学誌に発表した。研究の対象は、前立腺がんの進行度の指標となるPSA(前立腺特異抗原)の値(正常値は4以下)が20を超える患者307人。前立腺に放射線を照射した後、半数の患者には1年以上にわたって男性ホルモンを抑える注射を続け、残る半数は注射を1年未満で中止した。1年以上の長期にホルモン療法を受けた患者では、PSA値が正常値に戻った人は62・5%に上ったが、1年未満の短期療法の患者では37%と低かった。5年後の生存率も、長期のホルモン療法では87・5%と、短期療法の75%に比べて高かった。研究チームは、「長期のホルモン療法と放射線療法の併用が、がんの進行度に関係なく有効であることを示す研究は今回が初めて」としている。(平成17年11月7日 読売新聞)

脳腫瘍グリオーマ治療、放射線増量で生存率上昇

脳腫瘍の中でも悪性度が高いものが多い神経膠腫(グリオーマ)の治療で、放射線を従来の限界とされてきた総量より3〜5割多く照射すると、生存期間が大幅に延びることが東京大医学部脳神経外科の藤堂具紀講師らの解析でわかった。副作用も増えたが、藤堂さんは「腫瘍による死亡のリスクと比べた場合、許容できる副作用の範囲と考えられる」という。論文は、英医学誌「ランセット・オンコロジー」電子版に掲載された。グリオーマは脳腫瘍の約3割を占め、手術が難しい場所にできることも多い。放射線は治療の柱の一つだ。藤堂さんらは、東大病院の過去の記録から79〜89年に総線量60グレイの従来型治療を受けた94人と、90〜02年に総線量80または90グレイの照射治療を受けた90人の経過を解析し、比較した。グリオーマで最も多い「神経膠芽腫」は、2年生存率が従来型の11%が、照射が多い例は38%に改善。次に多い「退形成星細胞腫」では5年生存率が15%から51%に大幅に上がった。放射線による副作用が出た人は、従来型は94人中4人、照射の多いケースでは90人中23人と増えたものの、重篤なものは少なかったという。脳の正常細胞に影響を及ぼさない限度線量は理論上60グレイと考えられており、がん細胞への照射もこれをもとに計画されることが多い。今回のような照射は、専門の放射線治療設備があればどの病院でも取り組める治療で、その延命効果は国際的にも議論になっている。(平成17年11月7日 朝日新聞)

喫煙者の7割がニコチン依存症

たばこを吸う人の7割はニコチン依存症で、このうち7割は禁煙を試みながら失敗している。大阪府立健康科学センターの調査でこんな結果が出た。今年6月、全国の20〜79歳の喫煙者2600人にアンケートを郵送。回答があったうち、現在も喫煙をしている1666人(男性872人、女性794人)について分析した。「禁煙や本数を減らそうと試みてできなかったことがあったか」など10項目の「ニコチン依存症スクリーニングテスト」に答えてもらったところ、67.4%が依存症と判定された。男性は67.1%、女性は67.8%だった。 このうち、「禁煙したいですか」という質問に「はい」と答えたのは62.1%。また、70.6%が、今までに「試みたことがある」と答えた。いずれも、「依存症ではない」と判定された人の約1.7倍だった。また、過去1年間に医療機関を受診したうち、依存症と判定された人の32.3%は、禁煙を勧められていたが、実際に禁煙方法の説明を受けるなどの指導を受けたのは、その16%にとどまった。調査をまとめた中村正和・健康生活推進部長は「ニコチン依存を断ち切るのは難しい。禁煙治療を欧米のように医療保険の対象にし、普及を図る必要がある」と話す。(平成17年11月7日 朝日新聞)

臍帯血幹細胞の体外増殖に挑戦

赤ちゃんのへその緒に含まれる臍帯血(さいたいけつ)を使い、血液のもとになる造血幹細胞を体外で4倍程度に増やして白血病患者に移植する試みを、神戸市の先端医療センターが12月にも始める。細胞を供給する日本臍帯血バンクネットワークが5日、了承した。将来の「血液工場」の基盤技術にもつながるとみられている。先端医療センターは、ネットワークから提供された臍帯血に4種類のたんぱく質を加え、12日間培養する。これにより、造血幹細胞は4.3倍に、臍帯血移植の成功にかかわる細胞の全体では20〜30倍程度に増えることが確認されているという。造血幹細胞などを増やした臍帯血は、急性の骨髄性白血病とリンパ性白血病の患者計10人に移植する。1年間経過を観察し、安全性のほか、通常よりも臍帯血が早く患者に根付き、血液ができやすくなるかどうかを調べる。今年7月、ネットワークに研究利用を申請していた。白血病治療などを目的とした臍帯血移植は、これまでに国内で2500例以上実施されている。骨髄移植と違い必要に応じてすぐに移植できる、白血球型(HLA)の制約が緩やかなどの利点がある。造血幹細胞をもとに、白血球や血小板といった血液細胞に分化させる技術は確立しつつある。造血幹細胞を効率的に増やすことができれば、研究施設で血液細胞を工場のように大量生産することも可能になる。今回の試みが成功すれば、その第一歩になる。(平成17年11月6日 朝日新聞)

オーダーメード医療実用化へ

患者一人ひとりの体質に合わせた医療(オーダーメード医療)の臨床での実現に向け、国立国際医療センターは7日から、外来・入院患者らの遺伝子情報などのデータベース作りに乗り出す。同センターは2〜3年後から実際の医療現場での治療、予防に活用していく方針。オーダーメード医療では、東大医科学研究所を中心とするグループが薬の効果などの研究を始めており、実用化を目指した研究が拡大していきそうだ。対象となるのは、糖尿病や高脂血症、心筋梗塞、脳梗塞、肝硬変、白内障、がんなど122疾患。7日からまず外来患者への説明を始め、29の全診療科で患者の了解を得て血液や尿を採取する。その上で病気との関連が疑われる遺伝子のタイプ、尿中のたんぱく質や脂肪などを分析する。こうした遺伝子情報や臨床検査データなどをデータベースに登録する。3万人分の登録が目標としている。最も重要なのは遺伝子情報だ。遺伝子情報を調べると、個々人で少しずつ違う所があり、その違いによって薬の効果や副作用に違いが出る。この情報を知ることによって体質に合わせた治療や予防ができることになる。同センターは、患者の追跡調査も行い、遺伝子情報などから得られた治療法、投薬量が適切かどうかを検証する。東大医科研など14の研究機関と病院が2003年度から始めた「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」(5年間)では、約30万人の遺伝子から薬の効果、副作用などを調べ、データベース化を目指している。これとは別に、東大医科研では、2種類の抗がん剤について、効き目を遺伝子レベルで予測し、使い分ける外来診療を行っている。同センターは実際に医療現場で活用する段階では遺伝子情報はすべて匿名化する。同センター研究所の加藤規弘・遺伝子診断治療開発研究部長は「実用化のめどが立てば、個人情報の保護を万全にして他の医療機関にもデータを提供したい」と話している。国立国際医療センター:1993年、国立病院医療センターと国立療養所中野病院を統合して開設。 通常医療に加え、遺伝子治療や、エイズ、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)など感染症も研究。 発展途上国や災害発生地への医師の派遣、海外からの研修生受け入れも行っている。(平成17年11月5日 読売新聞)

がん幹細胞、消化器などから発見

九州大学生体防御医学研究所の森正樹教授(50)の研究グループは2日、消化器の癌の「幹細胞」とみられる細胞を、食道や胃、肝臓などから見つけたことを明らかにした。癌の幹細胞が見つかれば、これをたたくことでより効果的な治療ができると考えられている。成果は米国の専門誌「ステムセルズ」に掲載される。 幹細胞は、臓器などを構成する細胞のおおもとになる細胞を指し、さまざまな種類の細胞に変身(分化)する能力を持っている。これまでがんは「幹細胞が分化した後の、普通の細胞ががん化する」と考えられていた。 しかしがん患者に抗がん剤を投与したり、放射線治療をすると、いったん腫瘍が小さくなっても再びがんが増殖を始めることが多い。これは「がんの中に死滅しにくい幹細胞が存在し、これががんを作り出す」と考えれば説明がつき、実際に白血病や乳がん、脳腫瘍ではがん化した幹細胞が見つかっている。森教授と九大医学系学府大学院3年、原口直紹さんらは、手術で摘出された人間の消化器がん(食道、胃、大腸、肝臓、すい臓)の組織を使い、がん幹細胞を探した。その結果、(1)抗がん剤に強い耐性を持つ(2)自分と同じ細胞を作る複製能力以外に、自分とはやや違った細胞を作る分化能力もある(3)動物に移植すると、普通のがん細胞に比べて100倍以上の腫瘍を作るという性質を持った細胞を発見した。がん幹細胞の可能性が高いという。 放射線医学総合研究所は今年2月、人間の食道がんの組織からがん幹細胞とみられる細胞を発見したと発表している。九大グループの研究は多くの臓器で幹細胞の可能性がある細胞を見つけたのが特徴だが、森教授は「幹細胞を見つける方法論や条件設定に詰めなければならない問題があり、現段階でがん幹細胞と確定したとまではいえない」と話している。                       (平成17年11月3日 毎日新聞)

ブロッコリーの新芽で胃がん予防

ブロッコリーの新芽に、胃がんの原因と注目されるヘリコバクター・ピロリ菌を殺傷し、胃炎を抑える効果があることを、筑波大の研究グループが突き止めた。米国で開催中の米がん学会主催の国際会議で2日発表する。 同大の谷中昭典講師らは、ピロリ菌に感染している50人を2つのグループに分け、一方にはブロッコリーの新芽を、残り一方には、アルファルファのもやしを、それぞれ毎日約70グラムずつ、2か月間、食べ続けてもらった。成分で見ると新芽、もやしは、ほぼ同じだが、ブロッコリーの新芽には、スルフォラファンという成分(抗酸化物質)が多く含まれる。実験前後で、ピロリ菌の活性の強さを比較したところ、新芽を食べたグループは、活性が約30%〜60%減少。さらに、胃炎も抑えられた。もやしを食べたグループは、こうした変化は見られなかった。マウスでは確認されていたが、人間で確認されたのは初めて。谷中講師は「スルフォラファンは、特にブロッコリーの新芽に大量に含まれる。ピロリ菌を除菌しなくても、胃炎を抑え、胃がんを予防できる可能性がある」と話している。(平成17年11月1日 読売新聞)

親知らずから間葉系幹細胞 

抜いた後の親知らずから、欠損した体の組織再生に利用できる「間葉系幹細胞」を採取し、大量に培養する研究に岐阜大学医学部のグループが取り組んでいる。親知らずは多くの場合、医療廃棄物として捨てられているのが現状で、廃棄物の有効利用としても注目されそうだ。 骨髄などに含まれる間葉系幹細胞は、脂肪や骨などいろいろな体の組織になる性質を持っており、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や重い骨折などで骨の形成を促す際などに用いられる。広島大学などが下あごの骨髄から間葉系幹細胞を採取し、培養する研究に取り組むなど、世界中で研究が進められている。柴田教授らの方法では、親知らずの内部にあるシリコン状の歯髄や、完全に生える前の親知らずの表面を包んでいる歯小嚢(しょうのう)を使う。 歯並びの矯正などの治療を受けた患者から、研究で使うことを断ったうえでもらい受けた親知らずを細かく刻み、間葉系幹細胞を採取する。 この方法で採取された間葉系幹細胞は、1〜2週間で約1万倍に増殖させることができる。親知らずは生えていこうとする「勢い」を持っているため、柴田教授は「骨髄から採取した間葉系幹細胞よりも活性度が高い」と指摘する。 また、零下180度ほどの液体窒素で親知らずを凍結させれば、半永久的に保存することもできる。現在、約30人分の親知らずから間葉系幹細胞の培養を行っており、歯の保存状態が良ければ、ほぼ100%の確率で採取が可能だという。間葉系幹細胞:人の骨髄の中に存在し、骨や筋肉、靭帯(じんたい)などの胞に分化する働きを持っている。このため、骨粗鬆症や重度の骨折の治療などに使われるケースもある。細胞の採取は比較的容易で、培養技術に関する研究が世界的に進められている。また近年では、心筋や神経細胞に分化する可能性も指摘されており、再生医療の分野で注目されている。(平成17年10月25日 朝日新聞)

カテキンに血糖値低下効果

花王はお茶に含まれるカテキンという成分に、血糖値を下げる効果があることを発見した。糖尿病の患者に高濃度のカテキン飲料を飲んでもらう実験で効果を確認した。甲子園大学の山本國夫助教授らのグループと共同研究した。 カテキンが340ミリリットルあたり576ミリグラム入った高濃度のお茶を毎日、糖尿病患者23人に12週間飲んでもらった。その結果、血糖値は平均で1デシリットルあたり約126ミリグラムと8ミリグラム下がり、正常値の同80―120ミリグラムに近づいた。(平成17年10月24日 日経産業新聞)

ファーストフードとアトピー性皮膚炎

妊娠後期と授乳期に揚げ物やスナック菓子、ファーストフードを多く摂取した母親から生まれた子供は、摂取しなかった母親から生まれた子供に比べアトピー性皮膚炎になる頻度が低い可能性が明らかとなった。10月22日に盛岡市で開催された日本アレルギー学会の一般口演「疫学」のセッションで、国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部アレルギー研究室室長の松本健治氏らのグループが発表したものだ。松本氏らは広島市の全公立小学校2年生の保護者を対象としてアンケート調査を行った。アンケートの配布数は1万1163、有効回答率は89.3%で、うち女児が4776人、男児が4878人であった。その結果、妊娠後期と授乳期に揚げ物やスナック菓子、ファーストフードを多く摂取した母親から生まれた子供は、アトピー性皮膚炎の発症頻度が有意に低く、特に4歳以降の発症が少なかった。ただし、食物アレルギーや喘息など他のアレルギー疾患には相関は見られなかった。また食べる頻度とアトピー性皮膚炎の間には、妊娠後期での摂取では相関関係はなかったが、授乳期の摂取では食べる頻度が高いとアトピー性皮膚炎を発症しにくい傾向があった。松本氏は、「ファーストフードに含まれる脂質が、それほど悪い過酸化脂質ではないのでは」と分析するとともに、「脂質を摂取したことで子供の皮膚に保護効果を与えているのでは」と推測している。(平成17年10月24日 medwave)

胃酸の逆流が不眠症の原因に

米国の多くの不眠症患者は、その原因として胃食道逆流症(GERD)を疑われることが、医学誌「Alimentary Pharmacology and Therapeutics」9月号に掲載された新たな研究で明らかにされた。米ジェファーソン大学医学部(フィラデルフィア)の研究者らは、医学的な原因を特定することができない睡眠障害がみられる患者16例を対象として、睡眠の状態を観察した。全例とも、過去にGERDと診断されたことも治療を受けたこともなかった。このうち8例には日中に酸逆流の症状が認められ、残る8例には何ら認められなかった。症状のみられる患者に2〜3週間にわたって、酸分泌を抑制する薬剤であるプロトンポンプ阻害薬オメプラゾール20mgを1日2回服用させた。その結果、重度の睡眠障害に酸逆流が伴う患者のうち、6例に著しい治療効果が認められ、残る2例では効果は認められたものの、その程度はそれほど高くなった。同大内科教授で消化器病学部長のAnthony DiMarino博士は、「これまでGERDと診断されたことのない患者でも、睡眠障害と酸逆流との間に何らかの関係が存在する可能性が示された。 この結果に基づいて、安眠を得るために睡眠薬を服用する前に、家庭医や胃腸病専門医を受診してGERDかどうかの診断を仰ぐ必要がある」と述べている。(平成17年10月21日 日本経済新聞)

グレープフルーツの香りで脂肪燃焼

グレープフルーツの香りをかぐことで脂肪が燃焼されることが、大阪大蛋白質研究所の研究で裏付けられ、13日、札幌市で開催されている日本肥満学会で発表された。これまでもグレープフルーツの香りにダイエット効果があるといわれてきたが、科学的な証拠はなかった。一方、ラベンダーの香りは正反対の作用を及ぼし、脂肪を蓄積させることも、同じ研究で明らかになった。永井教授らは、グレープフルーツから抽出した精油を10分間、実験用ラットにかがせた。その結果、脂肪が分解され血中のグリセロール濃度が2倍以上になった。また、体温が上昇し脂肪が燃焼されていることが分かった。同時に、交感神経の活動が弱まり食欲を低下させ、においをかいだラットはかいでないラットと比べ、体重が約5%減った。永井教授は「体温が上がることなどは人間でも分かっている。ただ、体内時計が乱れると効果がなくなるので、規則正しい生活を送ることが大切。またかぐ量にも注意する必要がある」と話している。(平成17年10月13日 産経新聞)

C型肝炎ウイルス増殖抑制、耐性出にくい薬剤開発に期待

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した細胞側の働きを抑えてウイルス増殖を止めることに、中外製薬創薬研究二部の研究チームが成功した。ウイルスを直接攻撃しないため、耐性を持つウイルスが出にくい薬剤の開発につなげることが期待できるという。17日、米科学誌ネイチャー・ケミカルバイオロジー(電子版)に発表する。 HCVが細胞内でどう増殖するかは解明されていない。HCVは細胞内に入ると特定の脂質と結合して増殖の「足場」をつくるが、須藤さんらはこの脂質でHCVと結合する部分を特定。この部分が欠けているとHCVが増殖できないことがわかった。 この部分が合成されないような物質を見つけ出し、人の肝細胞を使って試験管内で実験したところ、HCVの遺伝子の複製を抑える効果を確認できた。 C型肝炎ウイルスの国内感染者は100万〜200万人とされる。須藤さんは「ウイルスが取り付く細胞側の仕組みを標的にすることができれば、より効果の高い薬の開発が進むのではないか」と話している。 東京都神経科学総合研究所は「HCVは変異が多いのが問題点で、細胞にあるものを標的にできれば、耐性が出ないような薬ができる可能性がある。今後は動物実験などで効果だけでなく、細胞への影響がないかなどの副作用を確かめる必要がある」と話している。(平成17年10月17日 朝日新聞)

本人の骨髄から幹細胞移植

信州大医学部付属病院は12日、重い狭心症のため心臓を取り巻く血管の流れが悪くなった男性患者(61)の心筋に、本人の骨髄から採った幹細胞を移植した結果、心機能の改善に成功したと発表した。患者はこの治療から1カ月後の今月2日、退院した。重い心筋梗塞(こうそく)の患者が骨髄の細胞移植で回復した例は、8月に埼玉医大から報告されたが、心筋梗塞に至る前段階の狭心症患者での回復例は、国内では今回が初めての報告だという。 治療したのは、信大病院循環器内科の池田宇一、心臓血管外科の天野純両教授らのチーム。 男性は4年前から狭心症を患っていた。今年7月に胸の不快感を訴えたため検査すると、心筋に栄養を送る「冠動脈」3本が詰まっていた。9月1日にうち2本について、人工血管を使ったバイパス手術をした。詰まりのひどい残る1本がカバーする心筋部分には、同時並行で幹細胞を直接注射して移植する治療を採用した。 実際には、本人の骨髄液550ミリリットルを採取し、再生になんらかの働きをする幹細胞を集めて、計5ミリリットルを注射。手術後、付近の血流が改善したのを画像検査で確認した。 患者は退院後、以前と同じ日常生活を送っており、今のところ副作用も認められていないという。治療にあたっては、事前に患者の同意と、院内の倫理委員会の承認を得た。池田教授は「将来はカテーテルを使って心筋に直接、幹細胞を注入できるようにして、患者の負担を減らしたい」と話している。(平成17年10月12日 朝日新聞)

片頭痛、中学生の5% 

中学生の20人に1人程度が、頭がずきずきと痛む「片頭痛」を患っていることをうかがわせる初めての大規模な調査結果を、名古屋市立大小児科グループがまとめた。大人よりやや少なめだが、周囲の理解不足から「仮病」と誤解されることもある。的確な診断と治療が行われなければ学業にも支障が出ると、専門家は指摘している。11日、京都市で開かれた国際頭痛学会で発表した。愛知県春日井市の中学生6869人(13〜15歳)を対象にアンケートし、6472人(男子3346人、女子3126人)から回答を得た。 頭痛発作が1〜72時間続く、ずきずきと痛む、吐き気や光過敏があるなど、片頭痛の国際診断基準に当てはまったのは、男子110人(3.3%)、女子203人(6.5%)で、全体の4.8%だった。頭痛の継続時間は、過半数が1〜4時間未満。吐き気やめまい、耳鳴りなどを伴うことが多く、起こりやすいのは「睡眠不足のとき」や「ストレスがたまったとき」との答えが目立った。大人の片頭痛持ちは男性3.6%、女性13%で、全体の8・4%との報告がある。今回の結果はこれよりもやや低率だが、調査を担当した安藤直樹医師は「日本人は痛みを我慢させがちな上、子どもの頭痛があまり知られていないため、『仮病』だと思われることもある。それがストレスになり、学校生活に支障が出る可能性もある」と指摘する。藤田光江・筑波学園病院小児科診療部長は「子どもの頭痛は大人より軽いことが多く、痛みが始まって鎮痛剤をすぐ飲めば抑えられる。家族に片頭痛を持つ人がいる場合が7割を占めるので、心当たりがある場合は受診を」という。(平成17年10月12日 朝日新聞)

膵臓のたんぱく質がインスリン分泌抑制

群馬大生体調節研究所は11日、独立行政法人理化学研究所と協力し、膵臓のβ細胞内にあるたんぱく質「グラニュフィリン」が、糖尿病の原因となるインスリン分泌量を抑制していることを突き止めたと発表した。今後、さらに仕組みの解明を進め、グラニュフィリンに着目した糖尿病の新たな治療法につなげたいとしている。同大研究所の泉哲郎教授らによると、同大研究所は1999年、インスリン分泌にかかわっている可能性のある物質としてグラニュフィリンを発見。マウス実験で、グラニュフィリンがないとインスリンの分泌量が多くなることを確認したという。今回の研究は、米国の学術誌「ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」の10月10日号に掲載された。糖尿病はインスリン不足などから、血糖値が高くなり様々な合併症を伴う。治療にはインスリン注射や、インスリン分泌を促進する薬の服用などがある。(平成17年10月12日 読売新聞)

飲む育毛剤

万有製薬は11日、医師の処方せんを必要とする国内初の「飲む育毛剤」の入承認を厚生労働省から取得したと発表した。11月後半にも発売する。保険適用外で、病院での診察料と薬代は全額が患者負担となる。発売するのは、親会社のメルクが60カ国以上で発売している男性専用の脱毛症治療薬「プロペシア錠0.2ミリグラム/1ミリグラム」(一般名はフィナステリド)。医療用医薬品で購入には医師の診断と処方せんが必要。原則1日1錠を飲み続ける。保険は適用されず、薬の価格はそれぞれの医療機関や薬局が決める。万有は参考処方価格として1錠250円(税抜き)に設定している。この薬は頭髪の成長の妨げとなる男性ホルモンの活性化を抑制する。額から頭部中央の脱毛を抑え、育毛などの効果を発揮するという。国内臨床試験では1年間服用した被験者の54―58%で脱毛症の改善が確認されたという。作用の仕組みが異なるため、一般用医薬品(大衆薬)である大正製薬の発毛剤「リアップ」との併用も可能という。(平成17年10月11日 日本経済新聞)

がん増殖止めるカギ、たんぱく質発見 

がん細胞の増殖を止める鍵になるたんぱく質を、米ハーバード大の中谷喜洋教授らの研究チームが発見した。がん細胞内で、このたんぱく質「p600」の合成を妨げたところ、がん細胞は増殖を止め、次々と自滅したという。子宮がんや骨肉腫など、様々ながん細胞で効果を確認しており、新しい抗がん剤の開発につながると専門家は期待している。今週発行の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載される。 体内では、役目を終えたり、異常が見つかったりした細胞が増殖を止めて自ら死に、新しい細胞が生まれることで新陳代謝が繰り返されている。この細胞の自殺(アポトーシス)がうまく働かなくなると、細胞は無秩序に増殖し、がんになる。中谷教授らが発見したp600は、アポトーシスに深くかかわっているとみられる。 同教授によると、培養したがん細胞内のp600は、正常細胞と比べて異常に増えており、「自殺機能」が働かなくなっていた。そこで、p600の合成を妨げる特殊な手法で培養細胞中のp600の量を減らすと、がん細胞は次々と死んでいった。正常細胞には影響がなかった、という。 子宮頸(けい)がん、骨肉腫、乳がん、直腸がんの細胞で、がん細胞は10%以下になった。胃、小腸、大腸、肺、卵巣、前立腺の各がん細胞では、同様のp600の異常増加が起きていることが分かった。このため、中谷教授は「ほとんどすべてのがんで効果が期待できる」とみている。 ただ、人体への臨床応用には、p600に結びついて過剰な働きを抑え、しかも毒性のない物質の開発が必要になる。その後、健康人での安全性の確認、患者への治験などの段階を踏むことになる。従来の抗がん剤の多くは、細胞のDNA合成を妨げるもの。正常細胞のDNAにも影響を及ぼすため、副作用が強い。 効果も限定され、薬だけで治癒可能なのは、血液やリンパ球などごく一部の特殊ながんだけで、より一般的な胃がんなど固形のがんを治癒する薬は、ほとんどないのが現状だ。(平成17年10月4日 朝日新聞)

高齢者医療費、現役並み所得者80万人が「3割負担」に

医療費の窓口負担が一般高齢者の2倍の2割となっている70〜74歳の「現役並み所得者」が、06年度の税制改正で約80万人増えることが2日、厚生労働省の調べで分かった。同省は06年度の医療制度改革で「現役並み所得者」の窓口負担を現役と同じ3割に引き上げる方針。このため現在窓口負担が1割の80万人は税制改正で「現役並み」への移行を経て、一挙に負担が3割にアップする。同省は新「現役並み」の80万人について、段階的引き上げなどの激変緩和措置を導入する意向だが、高齢者層の強い反発を招きそうだ。現在、70歳以上の人の窓口負担は1割。しかし、厚労省は年間課税所得が145万円以上ある人を「現役並み所得者」と位置付け、2割負担を求めている。年金受給世代で課税所得が145万円となるのは、単身世帯なら年収484万円で、夫婦世帯は621万円。06年4月の税制改正で老年者控除が廃止となり公的年金等控除も縮小されるため、「現役並み」収入基準は単身世帯は約380万円、夫婦世帯は約520万円に下がる。これにより、現役並みの人数は現行の約110万人から約190万人に増え、70〜74歳層に占める割合も6%から11%に増加。 厚労省は医療制度改革関連法案に、現役並みの負担を3割にアップさせることを盛り込む考えだ。新たに現役並みとなる80万人の負担は、来年4月から現行制度に則して2割となり、同法案が成立すれば、来年10月にも制度上3割となる。 また、医療費の自己負担限度額は、一般高齢者が月額4万200円なのに対し、現役並みは「7万2300円+医療費の1%」。同省は自己負担限度額もアップさせる方針で、新「現役並み」は、窓口負担同様、負担増の幅が大きくなる。(平成17年10月3日 毎日新聞)

軽い病気「患者負担を」 

低額の医療費は公的医療保険の対象から外して患者の自己負担とする「保険免責制度」が、医療費抑制のための検討項目として、10月中旬に厚生労働省が公表する医療制度改革試案に盛り込まれることになった。1回の診療にかかる医療費のうち500円、1000円などの一定額を患者負担とし、保険の適用はそれを超える分とする方法。軽い病気から重い病気まで広くカバーする今の医療保険制度の根幹にかかわるだけに、政府・与党内でも大きな論議を呼びそうだ。 免責制度は、保険は生死にかかわるような重い病気の時にこそ必要で、風邪などの軽い病気には適用しないという考え方に基づく。自己負担を増やすことで患者にコスト意識を持ってもらい、過度な受診を防ぐ効果も狙う。 財務省が02年度の医療制度改革時に「外来1回、入院1日あたり500円」を提案。今年6月の政府の「骨太の方針」決定の際には経済財政諮問会議が検討課題として明記を求めたが、厚労省や与党側の反対で見送られていた。総選挙での圧勝を受け、小泉政権内で医療費抑制論が強まる中、厚労省も議論は避けられないと判断した。 今回の改革試案では、「免責額500円」「1000円」など複数のケースごとに患者負担や医療費抑制効果の試算を示し、導入の是非を議論する材料としたい考えだ。 ただ導入すると、高齢者ら受診回数が多い人ほど負担が重くなる。医療関係者の中には、症状が軽い間は受診を控えるため、重症になってから受診する人が増え、かえって医療費がかかるという指摘もある。 もともと医者にかかる機会が少ないサラリーマンら現役世代からは「保険に入っている意味がない」と不満が出ることも予想され、厚労省内にも慎重論が根強い。 さらに、サラリーマンの窓口負担を3割に引き上げた際の改正健康保険法の付則には、保険給付を「将来にわたり100分の70を維持する」と明記されている。免責制度を導入すれば実質的には7割給付を割り込むため、厚労省には実現性を疑問視する意見もある。 (平成17年10月2日 朝日新聞)

放射線治療増え、専門医は不足

がんを切らずに治す放射線治療が普及する一方で、治療を行う常勤の専門医が1人またはゼロの医療機関が半数を超えていることが、読売新聞が実施した全国調査で明らかになった。これらの医療機関には、大学病院や、厚生労働省が指定した「地域がん診療拠点病院」も含まれていた。不十分な体制での治療は医療事故にもつながりかねず、専門医の育成が急務だ。調査は、日本放射線腫瘍(しゅよう)学会認定施設など放射線治療を行う主な医療機関287施設が対象で、昨年1年間の治療実績を文書で質問、244施設(85%)から回答を得た。それによると、放射線治療専門の常勤医師が1人以下の施設は、128か所と52%を占めた。これには5大学病院と、全国に135か所ある地域がん診療拠点病院のうち33施設が含まれた。常勤専門医が1人もいない施設は8か所あり、うち1か所は地域がん診療拠点病院だった。放射線治療は、体力的に手術が難しい高齢者も治療ができる利点がある。最近では、がんだけに集中的に放射線を照射する新しい方法が開発され、副作用も減らせるようになった。こうした長所を背景に、日本放射線腫瘍学会の調査では、2001年に約13万人だった放射線治療の新規患者数が、2003年には約15万人に増えている。しかし、同学会が認定する専門医は500人に満たず、米国の専門医の10分の1に過ぎない。かつての放射線治療が外科に比べて根治が難しかった点が、放射線の診断医に比べて治療医の成り手が少ないことの一因とも言われている。東京大病院放射線科の中川恵一・助教授は「治療を安全に行うには、複数の医師による照射計画のチェックが欠かせないが、1人ではミスの懸念がある。学会として専門医を増やす努力が必要だ」と指摘している。(平成17年10月2日 読売新聞)

介護施設の居住・食費、きょうから全額利用者負担

改正介護保険法の一部が1日施行され、介護施設の居住費と食費が保険給付の対象外となり、全額利用者負担となる。在宅で暮らす高齢者との負担の公平を図るのが主な狙い。利用者の負担増は月額数万円程度と見られ、厚生労働省では、この改正により、年間3000億円の介護給付費の削減を見込んでいる。対象となるのは、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設に入所する約80万人。部屋代や光熱水費などの居住費と食事の調理費などが、全額自己負担の在宅と違って、施設では、これまで保険で賄われていた。新しい自己負担額は施設と利用者との契約によって決まり、施設ごとに異なる。低所得者については、居住費、食費それぞれに負担の上限が定められるため、自己負担額は現在とほとんど変わらない見通しだ。(平成17年10月1日 読売新聞)

高齢者の医療費2割負担、対象者が1.7倍に拡大

厚生労働省は28日、来年度の税制改正に伴って医療費の窓口負担が2割になる70歳以上の高齢者が現在の1.7倍の190万人に増えるとの試算を公表した。現在は年収ベースで夫婦2人世帯で621万円以上の場合が対象となるが、これが520万円以上の世帯に広がる。 厚労省は高齢者でも一定以上の所得があれば、窓口負担を2割としたい意向だが、激変緩和措置が必要かどうかについても検討する。(平成17年9月29日 日本経済新聞)

毛髪の金属元素濃度でがん発見

毛髪中のカルシウムなど金属元素の濃度が、乳がんや肝臓がんの患者で異常な値になっていることが、兵庫県立先端科学技術支援センターや京都薬科大、千葉大などの研究で示された。今後、数千人規模で他の病気との関連も調べて、髪の毛を使った簡易検査法の確立を目指すという。同センターなどのチームは毛髪に含まれる金属元素の濃度と、病気との間に関係があるかどうかを調べた。特殊な光で微量な元素を分析できる、大型放射光施設「スプリング8」で測定した。毛髪は1カ月で平均1センチ伸びるため、12センチほどあれば、1年分の変化を分析できる。乳がん患者17人では、がん発見より8〜12カ月前からカルシウムの濃度が、通常の5〜10倍も高い値を示し、その後はゆっくり正常値に近づいていた。カルシウムの代謝が乱れることが原因らしい。 肝臓がん患者11人ではカリウム濃度が、健康な人に比べ10分の1以下だった。健康な人で見つからない、食物からのゲルマニウムも検出された。今後、検査法を充実させるための会社を立ち上げ、アルツハイマー病、骨粗鬆症、糖尿病などと、毛髪中の元素濃度との関係も調べる予定だ。千川純一・同センター所長は「この手法で異常が見つかった人が詳しい検査を受けるようにすれば、毛髪をさまざまな病気を見つける手がかりにできる可能性がある」と話す。(平成17年9月29日 朝日新聞)

副作用の有無、血液1滴で判断

薬の副作用が出るかどうかなどを、患者の血液1滴で1時間半で解析するシステムを理化学研究所などが開発、27日発表した。多数の装置を使い、数日かかった解析を自動化、病院でも簡単に使えるようにした。2006年秋には臨床研究用の試作品を出す予定で、患者の体質に合わせた「オーダーメード医療」の実現に役立つと期待される。人間の遺伝情報は、約30億個の塩基が並んでできている。このうち、「SNP」と呼ばれる一部の配列の違いで、体内の酵素の働きなどが変化、病気のかかりやすさや薬の効き方が異なってくる。このSNPを簡便に調べることができれば患者に合った医療が実現できるとされていた。 従来の解析は、1日がかりで血液からDNAを分離して、精製。それを温度調節して増やし、蛍光検出装置で調べていた。理研は、DNAを分離・精製せずに血液のままで検査する方法を、島津製作所や凸版印刷などと共同開発した。この装置なら、血液1滴をプラスチックチップにたらして機械に入れるだけで、副作用を引き起こすかどうかなどを迅速に判定できるという。(平成17年9月28日 読売新聞)

インスリン注射不要に

糖尿病の新治療法を目指して、インスリンを分泌するヒトの膵臓(すいぞう)の細胞を大量に作る技術開発に岡山大などのグループが成功した。マウスを使った実験で効果も確かめ、この細胞を利用した患者の体内に植え込む人工膵臓の開発も進めている。25日付の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版で発表する。 開発したのは同大医学部の田中紀章教授、小林直哉助手らを中心とする日米などの国際研究グループ。 膵臓のβ(ベータ)細胞はインスリンを分泌し血糖値を下げている。β細胞が破壊されたり、その働きが悪くなったりした糖尿病患者は、毎日、インスリン注射をしている。β細胞を作って患者に移植できれば、注射が不要となる利点がある。グループはヒトのβ細胞に、寿命をのばす遺伝子組み換え操作をして大量に増殖させた。ただ無限に増えるとがん細胞になる恐れがあるので、寿命をのばす遺伝子を後で取り除く操作もした。 増やしたβ細胞がインスリンを作ることを確かめた上で、糖尿病のマウスに移植すると、ぶどう糖を与えた後の血糖値を健康なマウスと同レベルにできた。移植しなかった糖尿病マウスは血糖値が高いままで、実験開始10週後までに死んだが、移植したマウスは30週以上生きた。 これまでヒトβ細胞の大量増殖は困難とされてきた。β細胞を含む膵島を提供者から移植する手術も試みられているが、実施例は少ない。 田中教授らは、増やしたβ細胞を小さな容器に入れて体内に植え込む人工膵臓を開発中だ。 効果や安全性の確認に課題はあるが、1〜2年後をめどに完成させて動物実験を進め、将来的な糖尿病患者への応用を目指す。(平成17年9月26日 朝日新聞)

脂肪の幹細胞で骨髄再生

肥満の原因になる脂肪から、様々な組織のもとになる「幹(かん)細胞」を取り出し、骨髄を再生することに、日本医科大学のグループがマウスとラットの実験で成功した。骨髄は血液を作る働きをもち、将来は様々な血液疾患治療への応用が期待できる。10月の日本形成外科学会で発表する。 研究をしたのは、形成外科学(百束比古主任教授)と生化学第二講座(島田隆主任教授)のグループ。マウスとラットの脂肪組織を酵素で処理し、遠心分離器にかけて幹細胞を取り出して培養し、「足場」とともに皮下に移植したところ、骨髄をもつ骨が再生した。 幹細胞は骨や筋肉、神経など様々な組織や臓器になる可能性をもつ。再生医療では、受精卵から作る胚(はい)性幹細胞(ES細胞)や骨髄にある幹細胞を使った研究も進められている。だが、血液疾患の多くは骨髄に原因があり、骨髄幹細胞を利用するのは難しい。また豊富にある脂肪を利用できれば、倫理的な問題や移植による拒絶反応、患者の負担などの軽減も考えられる。 同大形成外科の小川令助手は「骨髄が再生したことで、正常な血液を作る環境が整うと予測される。骨髄線維症や大理石病、白血病などの治療への応用が期待できる」と話す。(平成17年9月24日 朝日新聞)

お年寄り転倒予防 歩くより自転車こぎ効く

お年寄りが寝たきりになる大きな原因が転倒による骨折だ。大腿(だいたい)部や腰周辺の筋肉の鍛錬が転倒予防につながると言われているが、それにはウオーキングよりも自転車こぎの方が有効なことが東北大の研究でわかった。岡山県倉敷市で開会中の日本体力医学会で発表された。年を重ねると、ひざを高く持ち上げる腸腰(ちょうよう)筋や小臀(しょうでん)筋と呼ばれる筋肉が衰え、転倒しやすくなる。同大の伊藤正敏教授、藤本敏彦講師らは、これらの筋肉を鍛えるには、どんなトレーニングが効果的かを調べた。筋肉は疲労回復のために、盛んに糖分を摂取する特性がある。研究チームは20代の学生5〜7人に、30分〜1時間の様々なトレーニングをしてもらい、身体の糖の取り込み分布を画像化できる陽電子放射断層撮影(PET)装置で分析した。その結果、階段上りでは、ひざ上げに最も重要な腸腰筋、次いで重要な小臀筋が使われた様子が確認されたが、ウオーキングやジョギングでは、腸腰筋の活発な動きは見られなかった。腸腰筋の活動が盛んだったのは自転車こぎで、ペダルを踏み込む際は、大腿部に力がかかるものの、もう一方の脚は、股(こ)関節を曲げてひざを上げるため、腸腰筋を使っていると考えられる。藤本講師は「自転車こぎで鍛えられる筋肉は、お年寄りでも同じ。階段上りは疲労感が残るうえ、無理すると心臓や肺に負担をかけ逆効果」と話している。(平成17年9月25日 読売新聞)

がん専門薬剤師を養成へ

厚生労働省は23日までに、2006年度から、がんの薬物療法についての専門的な知識や技能を持つ「がん専門薬剤師」を養成する方針を決めた。がんの医療現場では薬物療法の重要性が高まる一方で、副作用の可能性も大きくなるため、薬物療法に精通した薬剤師の存在が求められている。同省は一定の実務経験がある病院勤務の薬剤師を対象に研修と試験を行い、年間約300人を目標にがん専門薬剤師を認定する。 厚労省によると、がんの治療法は手術療法、薬物療法、放射線療法があるが、これまで国内では手術療法が中心で、薬物療法や放射線療法は手術療法との組み合わせで補助的に行われることが多かったという。(平成17年9月24日 日本経済新聞)

母がディーゼルの排ガス吸引、胎児の脳に粒子蓄積

妊娠中のマウスにディーゼル排ガスを吸わせると、胎児の脳にディーゼル粒子が蓄積されることが、東京理科大薬学部の武田健教授らの研究で明らかになった。マウスの行動や脳内ホルモン濃度にも異常が見られることから、脳内に侵入したディーゼル粒子が影響を及ぼしている可能性があるという。東京都内で21日に開かれた内分泌かく乱物質(環境ホルモン)に関するシンポジウムで発表した。実験では、ディーゼル排ガスの濃度を環境基準値並みにした部屋で、母マウスを妊娠2日目から2週間、1日あたり12時間飼育した。誕生した子マウスの脳を調べると、脳内を清掃する働きがある「血管周囲細胞」の中に、黒い粒子が蓄積されている様子が観察された。一部の神経細胞が死んでいたり、血管内皮がはがれたりする異常もあった。ディーゼル排ガスを吸った子マウスは、普通はおとなしくなる朝によく運動するなど異常が見られたほか、一部の脳内ホルモン量が増えていることも確認された。ディーゼル粒子が脳活動に影響を及ぼしている恐れがあるとしている。脳組織の異常を調べた菅又昌雄・栃木臨床病理研究所長は「人間でもディーゼル粒子は体内に蓄積され、アレルギーなどさまざまな病気の発症につながっている可能性がある」と指摘している。(平成17年9月22日 読売新聞)

インフルエンザ薬「アマンタジン」、耐性ウイルス急増

人で毎年流行するインフルエンザウイルスが、比較的安価な治療薬「アマンタジン」に対する耐性を急速に獲得、中国や香港で耐性ウイルスの割合が約7割に及ぶ深刻な事態になっていると、米疾病対策センター(CDC)のチームが21日、英医学誌ランセット(電子版)に発表した。 アマンタジンへの耐性は、アジアで流行中の鳥インフルエンザ(H5N1型)ウイルスでも報告されていた。人と鳥のウイルスが交雑し、世界的に大流行する新型インフルエンザが出現する事態が懸念されているが、CDCは今回の人のウイルスでの耐性拡大を受け「この薬は新型ウイルスの治療にはもう役に立たないだろう」と警告。世界的な新型インフルエンザ対策にも影響しそうだ。(平成17年9月22日 日本経済新聞)

タクシー内喫煙、粉じん濃度9〜50倍に

タクシーの車内で1人の乗客が喫煙すると、窓を5センチ開けても粉じん濃度が環境基準(1立方メートルあたり0.15ミリグラム)の9倍に達することが、東京大の中田ゆり客員研究員(国際地域保健学)らの調査で分かった。濃度が元に戻るには30分以上もかかり、研究グループは「乗務員や、喫煙者の後の乗客は受動喫煙の被害に遭う恐れが高い。全面的な禁煙化が必要だ」と訴えている。中田研究員らは昨年5月、東京都内で走行中のタクシー車内で、乗客がたばこを1本吸った時の粉じん濃度の変化を測定した。窓を5センチ開けた場合、喫煙者1人で粉じん濃度が環境基準の9倍、2人で24倍、3人で31.6倍にまで上昇した。喫煙者1人でも濃度は30分以上、元に戻らなかった。さらに窓を閉め切った状態では、喫煙者1人で環境基準の12倍となり、1時間以上も濃度が戻らなかった。喫煙者が2人では32倍、3人では49.6倍だった。環境基準は、職場における粉じん被害の目安として、健康増進法に基づき厚生労働省がガイドラインで定めている。一方、東京都内のタクシー運転手372人に聞き取り調査した結果、1回の勤務で乗客がたばこを吸う本数の平均は10.6本だった。運転手の47%が不快と感じ、38%はのどや目の痛み、せきなどの症状の経験があった。54%はタクシーを禁煙化すべきだと回答した。(平成17年9月18日 毎日新聞)

血液1滴で早期の悪性胃がん診断

千葉大学と東京医科歯科大学、北里大学の研究グループは、悪性胃がんの血液診断法を開発し、札幌市で開かれていた日本癌(がん)学会で16日、発表した。血液1滴を分析するだけで、内視鏡で調べても見つからないような早期の悪性胃がんを見つけられるという。今後、大規模臨床研究に取り組み、検査精度を高める。 開発したのは、若い女性に多く、進行の早いスキルス胃がんなど低分化型の胃がんをうまく見つけられる診断法。こうした胃がんはレントゲン検査や内視鏡検査で見つかりにくい。スキルス胃がんでは、見つかったときは約6割が手術できない状態で、手術した場合でも5年生存率は15―20%と低い。 従来の胃がんの血液診断法は進行した状態でないと見つからなかった。 千葉大の根津雅彦助手と野村文夫教授らは低分化型胃がん患者16人と健康な人24人の血液を高性能な解析装置で調べた。がん患者は手術可能な早期の患者で、そのうち3分の2はスキルス胃がん。分析の結果、血液に含まれる6個のたんぱく質断片が診断に使えることが分かった。(平成17年9月16日 日本経済新聞)

日焼け、赤くなる男性、発がん危険度高い
 
日焼けで皮膚が赤くなる男性は、黒くなる男性に比べて、血中のDNAを損傷する率が高いことを、入江正洋九州大助教授(健康科学)らが突き止めた。DNA損傷は発がんのリスクを高めるため、赤く日焼けをする人は注意が必要という。札幌市内で16日まで開かれていた日本癌(がん)学会で発表した。入江助教授らは、日ごろ屋外スポーツをしない男子大学生27人に、8月の晴れた日の海辺で午前10時から午後4時までの6時間、水着姿で日光浴してもらった。日焼けで赤くなる人と黒くなる人がほぼ半々に分かれた。 それぞれ、血中の白血球DNAの損傷を示す指標物質(ヒドロキシデオキシグアノシン)の濃度を測定した。赤くなる人は実験前に白血球10万個当たり0.6個だった指標物質が、実験後には1.2個程度まで倍増した。黒くなる人は実験前後でほとんど変わらず0.2個だった。実験翌朝に再度測定したが、黒くなる人はほとんど変わらないのに、赤くなる人は0.8個で、実験前のレベルには戻っていなかった。一方、27人を日焼け止めクリームを塗る群と塗らない群に分けて同様に実験したところ、塗る群の指標物質は実験前後で微増にとどまったのに対し、塗らない群は0.4個から0.6個に増えていた。尿や血液中の、この指標物質が増えると、皮膚の老化を起こしやすくなるとともに、肺や肝臓、泌尿器などの発がん性を高めることが、これまでの研究で指摘されているという。入江助教授は「日焼けで赤くなる人にとっては皮膚がんだけでなく、他の発がんリスクも高めることになる」と話している。(平成17年9月18日 毎日新聞)

抗がん剤投与量200分の1に、胃がん治療で新技術

愛知県がんセンターは、胃がんに投与する抗がん剤の量を200分の1に減らせる新技術を開発した。薬の入った微小カプセルを体内に入れ、がん細胞だけに効率よく作用させる。動物実験段階だが、少量の薬でもがん細胞が小さくなった。抗がん剤を減らすことができれば副作用を緩和できる可能性がある。3年後をメドに臨床研究を目指す。研究成果は14日、札幌市で始まった日本癌(がん)学会で発表した。新技術は胃がん患者の中でも転移した患者や再発した患者を想定している。同センター研究所の池原譲主任研究員らは、胃がんの抗がん剤を大きさ1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの特殊なカプセルに封入し、体内に入れると免疫細胞が取り込むように工夫した。免疫細胞は胃の中のがん細胞に集まるが、その際に抗がん剤がカプセルから飛び出す仕組みになっている。(平成17年9月15日 日本経済新聞)

老人保健施設の入所長期化

リハビリなどの介護を受けるために入所する老人保健施設で、入所者の平均在所期間が長期化していることが医療経済研究機構の調査で明らかになった。自宅復帰への準備ではなく、「住まい」として入所する人が増えており、介護保険制度の想定と実態が食い違っていることが浮き彫りになった。介護保険制度では老人保健施設は、けがや病気で入院していた高齢者が自宅復帰前にリハビリなどを一定期間受ける施設という位置づけ。介護報酬もリハビリなどの医療ニーズを織り込んで特別養護老人ホームよりも手厚い。しかし、1―2月に医療経済研究機構が実施した調査では、入所者の73.6%は「医療ニーズは在宅で対応可能」。20.8%は「リハビリは必要ない」とされ、リハビリが終わった後も入所を続ける人が多かった。(平成17年9月15日 日本経済新聞)

女性ホルモン、肺がんリスク高める

女性ホルモン剤が肺がんのリスクを高めることが、厚生労働省研究班(主任究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の大規模疫学調査で分かった。研究チームは今回の調査結果を肺がんが発症する仕組みの解明につなげたい考え。 成果は札幌市で開催中の日本癌(がん)学会で15日、発表する。研究班は喫煙経験がない40―69歳の女性4万5000人を8―12年追跡調査した。このうち肺がんになった153人を詳しく調べたところ、子宮筋腫などの手術を受けて人工的に閉経し、エストロゲンなどのホルモン剤を多く使用した人は、使用していない人に比べて肺がんにかかるリスクが2倍以上高いことが分かった。(平成17年9月15日 日本経済新聞)

65人に1人「体外受精」で誕生

精子と卵子を体外で受精させて子宮へ戻す「体外受精」によって国内で生まれた子供が、2003年の1年間で過去最高の1万7400人に達したことが、日本産科婦人科学会(武谷雄二理事長)の調査で13日明らかになった。調査したのは、同学会に体外受精の実施登録施設として届け出ている590施設。それによると、03年の体外受精による出生児数は1万7400人と、前年より2177人増加した。全出生数(112万3610人)に占める割合は1・5%で、この年に生まれた65人の赤ちゃんのうち1人が体外受精児になる計算だ。世界初の体外受精児は1978年に英国で誕生し、国内では83年に東北大が成功した。以来、体外受精は年々増え続け、同学会が調査を始めた86年以来の累積出生数は計11万7589人となった。調査を担当した久保春海・東邦大教授(産婦人科)は、「治療1回あたりの妊娠率はそれほど向上しておらず、不妊患者の数が増えた結果だろう。 安全に妊娠・出産できる年齢限界は35歳以下ということを認識してほしい」と述べ、体外受精件数を引き上げている高齢出産の増加に警鐘を鳴らしている。平成17年9月14日 読売新聞

血液で膵臓がんを早期発見

国立がんセンターは、血液1滴で膵臓(すいぞう)がんを発見できる診断法を開発した。精度は90%以上で、従来難しかった早期がんも見つけることができる。膵臓がんは発見、治療が難しいが、この診断法で早期発見すれば手術治療も可能となる。10月から全国規模で臨床研究を始める予定で、14日から札幌市で始まる日本癌(がん)学会で発表する。同センター研究所は、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一島津製作所フェローらが開発した高精度のたんぱく質解析技術を応用。膵臓がん患者の血液を調べたところ、4種類のたんぱく質の量が微妙に変化していることを突き止め、がん診断の指標にした。 78人から採血して調べた結果、大きさが2センチ以下の早期がんも含め90%以上の高精度で膵臓がんかどうかを判別できた。腫瘍(しゅよう)マーカーと呼ぶ既存の診断法を組み合わせると100%になった。(平成17年9月14日 日本経済新聞)

肥満男性は大腸がんリスク増 BMI27以上で1.4倍

肥満の男性は大腸がんにかかるリスクが高くなるという結果が、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模な疫学調査で出た。8日発表した。肥満は心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中などの危険要因にもなるが、大腸がんとの関連も今回示された。岩手、秋田、新潟、茨城、長野、大阪、高知、長崎、沖縄各県の40〜60代の男女計約10万人に90〜93年、アンケート。その後、9〜12年間追跡調査した。男性は4万9158人中626人が大腸がんにかかっていた。肥満指数「BMI」(体重÷身長÷身長、単位はキログラムとメートル)によって分類。年齢や喫煙、飲酒などの影響を除いて分析した結果、BMIが25未満の群に比べ、27以上30未満の群は、大腸がんのリスクが1.4倍だった。30以上の群は、対象数がやや少ないものの、1.5倍になった。日本ではBMI25以上が肥満で、22が標準とされる。 欧米の研究では、男性の場合、高身長でもリスクが高まるとされるが、日本人の男性では、身長による統計上の明確な差は出なかった。女性は、肥満指数、身長ともに関連が見られなかった。 肥満だとインスリンが多く分泌され、がん細胞が増殖しやすい、と細胞レベルの実験で出ている。分析を担当した大谷哲也・同センター研究員は「BMIが27以上ならば、運動や食事で減量した方がいい」と話す。ただ、日本人は欧米に比べて肥満者の割合が低く、肥満だけで大腸がんが国内で大幅に増えている説明にはならず、「別の危険要因についても調べる必要がある」と言う。(平成17年9月8日 朝日新聞)

がん、満腹が招く?遺伝子に悪影響 

満腹するまで食べる習慣のある男性は、がん化を抑える遺伝子の働きが弱まっている率が高く、逆に、キャベツやブロッコリーなどを多く食べたり、緑茶を多く飲む男性ではこの率が低いことが、東京医科歯科大(東京都文京区)の湯浅保仁教授=分子腫瘍(しゅよう)医学=らの研究で分かった。14日から札幌市で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。がんに関連した遺伝子の働きが食生活で変化することが分かったのは初めてという。湯浅教授らは、同大病院などで手術を受けた男性の胃がん患者58人にアンケートし、がんになる以前の食事の量や内容などを聞いた。一方で患者ごとに、手術で切り取ったがん細胞を多数分析し、がん化を抑えると考えられている遺伝子「CDX2」の働きを調べた。「満腹するまで食べていた」と答えた22人のうち10人(45%)では、細胞の一部でこの遺伝子が「メチル化」と呼ばれる化学変化を起こし、働かなくなっていた。これに対し「腹八分」または「食事の量を少なくしていた」とした35人では、メチル化が起きていたのは10人(29%)にとどまった。無回答が1人いた。ほうじ茶を含めた緑茶を飲む量では、日に6杯以下と答えた43人のうち17人(40%)にメチル化がみられた。7杯以上飲んでいた14人では2人(14%)と少なかった。無回答は1人。またキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーのどれかを食べる回数でみると、週に2回以下とした32人中14人(44%)にメチル化があったのに対し、3回以上と答えた26人中では6人(23%)だった。湯浅教授は「研究が進めば、食生活の改善でメチル化を抑えたり、がん抑制遺伝子の働きを強めてがんを予防したりできるのではないか」と話している。(平成17年9月4日 毎日新聞)

厚労省が初のアレルギー総合対策

国民の3人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱える状況を改善するため、厚生労働省はアレルギー治療の地域ネットワークづくりなど診療体制の整備に乗り出す。来年度からの5年計画で、国がアレルギーの総合対策に取り組むのは初めて。中でもぜんそく死対策に力を入れ、「患者カード」の普及を図る。9月中にも対策の指針を都道府県に通知し、方針を徹底したい考えだ。 同省のアレルギー対策検討会の報告書は、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患を持つ人は、国民の30%以上にのぼり、ますます増加傾向にあるとしている。中でも深刻なのはぜんそくで、03年には3701人が死亡し、アレルギー関連死の99%を占めた。 しかし、アレルギー疾患については、日常的に対応する地域のかかりつけ医が診療ガイドラインをよく理解していないケースが多いという。このため厚労省は、日常的な生活圏に設けられた「2次医療圏」(全国370カ所)ごとに専門病院を決め、地域の医師の教育を進めるとともに、都道府県に最低1カ所は基幹病院を決めてネットワーク化。重症患者にも対応できる体制にする。 ぜんそく死については、患者自身の認識不足や不定期な受診などが原因で、減らすことができるとしており、「ぜんそく死ゼロ作戦」と銘打って5年間で死者をなくすことを目標に掲げる。具体的には、発作が起きた時に適切な救急医療が受けられるよう、医療機関名や病歴、合併症の有無、治療状況、服用している薬の名前などを記入して常に身につける「患者カード」の普及や、アレルギーに対応できる救急病院の整備を都道府県に促す。都道府県ごとに、医師会や専門病院などで構成する協議会を設置してもらい、こうしたアレルギー対策を地域医療計画に盛り込むよう求める。(平成17年9月7日 朝日新聞)

がん転移“誘導”たんぱく質発見

がん細胞が他の細胞に侵入したり、転移したりするのに重要な役割を果たす新しいたんぱく質を、名古屋大大学院医学系研究科の高橋雅英教授らの研究チームが発見した。このたんぱく質の働きを抑制することで、がんの進行を食い止める治療薬の開発に道を開く可能性がある。米科学誌「デベロップメンタル・セル」の5日号に発表する。がん細胞内には、「Akt/PKB」と呼ばれる酵素が多くあることが知られていた。しかし、この酵素が存在すると、なぜ、がん細胞が他の細胞の間に侵入(浸潤)し、広がっていくか謎だった。研究チームは、この酵素によって、リン酸化される未知のたんぱく質があることを発見。このたんぱく質によって、がん細胞が、他の細胞間に浸潤する能力が高まることを突き止めた。このたんぱく質は、他の細胞に浸潤していくがん細胞の先端部分に多く存在し、このたんぱく質が、がん細胞を“誘導”していると見られる。高橋教授は、このたんぱく質を「Girdin(ガーディン)」と命名した。 がん細胞は、増殖と浸潤を繰り返すが、高橋教授は「他の細胞への浸潤を抑制できれば、がん進行を食い止めることができるかもしれない」としている。(平成17年9月6日 読売新聞)

脳脊髄液減少症

難治性むち打ち症の「真相」として「脳脊髄(せきずい)液減少症」が注目される中、新潟県が両症の関連性を念頭に、患者十数人を医療機関に紹介していことが分かった。また「学説が定まっていない」として有効とされる治療法に健康保険適用を認めていない国に対し、保険適用や研究推進を求める署名活動が19都府県に広がっていることも判明。痛みの原因が分からず「怠け病」などと誤解を受けてきたむち打ち症患者にとっては、追い風になる。新潟県は昨年6月、200床以上の30病院と15の県立病院を対象に、脳脊髄液減少症の治療への対応を調査し、3病院から「既に取り組んでいる」と回答があった。加えて、県内14保健所に患者団体が作成した同症のガイドラインなど資料を配布して周知し、これが疑われる症状の患者に医療機関を紹介する態勢を整えた。保健所を通じて同症を治療する医療機関を紹介した患者は十数人いるという。さらに、脳脊髄液減少症を医師に広めるため昨年12月、地元の患者団体と勉強会を共催。県医薬国保課は「少しでも苦しんでいる患者の力になれれば」としている。全国に10万人以上ともいわれる患者に対し、脳脊髄液減少症の治療をする医師は数十人しかいないとされ、近隣に医療機関がなかったり、数カ月間順番を待つ状態が続いている。「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)新潟支援の会」の青山優子さん(49)は「県の担当者は私たちの訴に耳を傾けてくれた。もっと多くの医師が治療に取り組んでほしい」と話す。署名活動も進んでいる。NPO法人鞭(むち)打ち症患者支援協会(和歌山市)によると、宮城、新潟、千葉、大阪など12府県の患者が (1)脳脊髄液減少症の研究推進と治療法の確立 (2)有効とされるブラッドパッチ療法への保険適用を求める署名を提出。 うち8府県議会が意見書を採択した。東京、福岡など7都県で署名集めをしている。(平成17年9月4日 毎日新聞)

血液からBSEやヤコブ病の原因物質検出

牛海綿状脳症(BSE)や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の原因となる異常プリオンというたんぱく質を血液から検出する技術を、米テキサス大などの研究チームが開発した。試験管内でたんぱく質を1000万倍に増やすことに成功したためで、プリオン病の早期診断や拡大防止に役立つと期待される。28日付の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。 異常プリオンは体内に入ると正常プリオンを異常型に変え、脳や脊髄(せきずい)などにたまる。血液に含まれる量はわずかなため、検出が難しかった。 研究チームは、試験管内で異常プリオンに正常型を加えて培養するなどして、短時間で1000万倍以上に増幅させることに成功。プリオン病を発症したハムスター18匹をこの方法で調べると、89%にあたる16匹の血液から異常プリオンを検出できた。健康なハムスター12匹からは検出されなかったという。 同チームは異常プリオンに感染させた未発症の動物についても検出が可能か調べているという。 東京医大の金子清俊教授(神経生理学)は「この方法が確立されれば、牛を殺さずに、手早く生前診断ができるようになり、大きな意義がある。動物の種によって検出しやすさに差があると聞いており、人や牛でも可能か確認を進める必要がある」といっている。(平成17年8月30日 朝日新聞)

体になじみやすい血管・心臓弁

国立循環器病センター研究所と京都府立医科大学、ブリヂストンは共同で、体になじみやすい心臓弁や血管を作ることに成功した。これらを移植すれば、特別な薬を飲み続ける必要がなくなり、血が止まりにくくなる危険などを回避できるとみている。動物実験で性能の検証を進めており、動脈硬化による心臓病などの治療向けに3年以内に実用化する。研究チームは体内に異物が埋め込まれると、周囲の組織が異物をくるんで無害化しようとすることに注目。ブリヂストンを中心に高分子製の特殊な鋳型を開発し、この鋳型をウサギなどの体内に約1カ月埋め込んでから取り出して、管や弁の形をした特殊な組織を作ることに成功した。 できたこの管を使って同じウサギの血管をつないだところ、拒絶反応を起こさずに定着した。一方、弁は心臓の中と同等以上の圧力を加えても壊れないことを確認したという。(平成17年8月29日 日本経済新聞)

介護予防サービス支払い、定額と成功報酬を導入

厚生労働省は介護保険制度改革により来年4月から導入される介護予防サービスで、事業者に支払われる報酬に、1か月単位などの定額払い方式と、利用者の状態改善に応じた成功報酬の仕組みを導入する方針を固めた。定額払いと成功報酬を導入するのは、計16種類の予防サービスのうち、デイサービス、通所リハビリテーション、訪問介護の3種類。これらのサービスは、現行制度では、介護の必要度に応じ、時間ごとに報酬が支払われている。しかし、厚労省では、時間による出来高払いの仕組みでは、改善効果が低いサービスを長時間提供し続ける事業者が出かねないと判断。軽度の要介護者のみを対象とする予防サービスでは、サービス内容がある程度共通していることから、内容を標準化し、月ごと、またはサービスメニューごとの定額払いが適当と判断した。また、効率的なサービス提供を促すため、運動機能や栄養状態などで高い改善結果を出した事業者には報酬を加算。効果が出なかった場合は報酬を減算する。厚労省は30日夕方に開かれる社会保障審議会介護給付費分科会・介護予防ワーキングチームにこれらの方針を提示。 分科会で具体的な報酬額を検討し、来年1月に決定する。(平成17年8月30日 読売新聞

骨セメント:副作用で32人が死亡

骨折治療などに使われる「骨セメント」について、厚生労働省は25日、医薬品・医療機器安全性情報を出し、慎重な使用を呼びかけた。01年度から04年度までに、使用された患者32人が副作用とみられる血圧低下などを起こして死亡し、他に5人が意識障害などになった。同省は92年から3度、同情報を出しているが、改めて呼びかけた。心臓や肺に病気のある患者、高齢者、肥満の患者などはリスクが高いという。同省はまた、漢方薬「補中益気湯」で99年以降、5人の患者が副作用とみられる重い肺炎の一種「間質性肺炎」を起こし、うち1人が死亡していたと発表した。(平成17年8月26日 毎日新聞)

パーキンソン病、電流刺激で症状改善

パーキンソン病の運動症状などが、強さがでたらめに変わる雑音のような微弱電流で脳を刺激することによって改善できることを、東京大の山本義春教授(教育生理学)や郭伸・助教授(神経内科学)らの研究チームが実験で確かめ、米神経学会誌8月号に発表した。神経の電気信号が、微弱電流で強められる「確率共鳴」という現象が起き、低下していた脳の情報処理機能が改善されたとみられる。薬が効かない症状も改善したといい、体への負担が少ない新治療法としての実用化が期待される。症状が重いパーキンソン病などの患者計15人の耳の後ろと額に電極を付け、微弱電流を額の方向に流して、姿勢の調節にかかわる前庭神経を丸1日刺激し続けた。その間、体に装着したセンサーで体の動きと心拍を記録した。患者には、動作が鈍かったり、動作を始めるとなかなか止まらなかったりという運動症状がある。だが、電流刺激を受けている間はこうした症状が改善することが分かった。(平成17年8月27日 日本経済新聞)

再生医療で重い心臓病改善

埼玉医科大学は27日、重症の心臓病患者に患者の骨髄細胞を移植する再生医療を実施して、弱った心臓の機能を回復させることに成功したと発表した。患者は補助人工心臓をつけないと生命を維持できないほど重症だったが、日常生活を送れるまでに改善し、同日退院した。補助人工心臓をつけた重症患者が再生医療で退院できるまでに回復したのは、世界でも初めて。 治療を受けた患者は61歳の男性で、今年2月に心筋梗塞(こうそく)を起こし同大総合医療センターに入院した。一時的に心停止状態になったが、補助人工心臓を着けて命を取り留めた。持病の糖尿病が原因で腎臓の働きが低下し透析治療をしていることなどから、心臓移植も受けられる状況になかった。 許俊鋭教授らは患者の腰骨から骨髄液を採取し、赤血球などを除いた細胞などを冠動脈内に注入する治療を5月に実施した。その後、心臓の機能が回復し、6月には補助人工心臓を取り外すことができた。(平成17年8月27日 日本経済新聞)

寿命延ばす?たんぱく質発見

寿命を延ばす作用があるたんぱく質を、黒尾誠・米テキサス大助教授と東京大、大阪大などのチームがマウス実験で見つけた。こうした物質が、哺乳(ほにゅう)類で見つかったのは初めて。このたんぱく質は人間でもつくられており、将来、薬でこのたんぱく質を増やすなどして、寿命が延ばせるようになるかも知れない。米科学誌サイエンスの電子版に26日、論文が掲載される。 この物質は、黒尾さんらが8年前に見つけた遺伝子「クロトー」がつくるたんぱく質。遺伝子操作でクロトーたんぱく質が通常のマウスの2〜2.5倍できるマウスを作ったところ、通常のマウスの寿命が平均約700日なのに対して、平均で2〜3割長生きし、3歳に達したものも出た。 このたんぱく質は脳や腎臓でつくられる。一部が血液で体中に運ばれ、インスリンの作用を抑制するように働いていた。通常のマウスにこのたんぱく質を注射すると、血液中の糖を体の組織に取り込むインスリンの働きを打ち消し、血糖値が上がった。インスリンの働きを抑えすぎると糖尿病になるが、適度に抑えることで寿命を延ばすとチームは見ている。 クロトー遺伝子が壊れたマウスは、動脈硬化や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、肺気腫などで短命なことが知られていた。黒尾さんはこのたんぱく質がホルモンとして老化を制御するとしており、「人の老化や生活習慣病の治療・診断に応用できる可能性がある」という。 これまで、哺乳類の寿命を延ばす方法としては唯一、体に取り込むカロリーの制限食事制限)が有効なことが、多くの動物実験で確かめられており、インスリンとのかかわりを指摘する説もある。(平成17年8月26日 朝日新聞)

睡眠不足で仕事の能力低下、薬で回復

睡眠不足のために落ちた仕事の処理能力を薬で回復させる実験にサルで成功したと、米ウェークフォレスト大(ノースカロライナ州)などのチームが25日までに米科学誌に発表した。人で効果が確認できれば、パイロットや医療従事者ら、睡眠不足でも高い処理能力が求められる人の助けになりそうだという。研究は兵士の睡眠不足に関心が強い米国防総省の助成を受けた。カリフォルニア州のコーテックス製薬が開発中の「アンパカインCX717」という薬剤。記憶などにかかわる神経伝達物質グルタミン酸の働きを脳内で長持ちさせる働きがあるとされる。チームはアカゲザルに、最初に1枚の絵を見せ、後で複数の絵の中から同じものを選ばせるテストをした。徹夜させて寝不足の状態に置くと間違いが増え、時間もかかったが、薬を注射すると成績は平常時並みに。テスト中に脳の活動を調べると、寝不足時は脳の特定の場所の活動が低下したが、薬を与えると平常時のパターンに戻った。(平成17年8月26日 日本経済新聞)

劇症肝炎患者に肝細胞増殖因子

京都大学医学部付属病院は24日、劇症肝炎患者を対象とする臨床試験(治験)を始めると発表した。臓器・組織の再生作用を持つ肝細胞増殖因子(HGF)と呼ぶたんぱく質を16人の患者に投与し、肝機能の回復を目指す。2007年6月まで実施し、安全性や治療効果を確かめる。劇症肝炎はウイルス感染などが原因で肝臓の細胞が急激に壊れる病気。老廃物が浄化できず、血液を固める成分が作れなくなる。意識障害も起きる。正常な肝臓を移植する以外に有効な治療法がない。製薬会社による治療薬の開発は進んでおらず、京大は医師主導で治験を実施することを決めた。(平成17年8月24日 日本経済新聞)

関節リウマチ原因遺伝子新たに5種発見

製薬会社など約90社で構成する「バイオ産業情報化コンソーシアム」と産業技術総合研究所は、数10種類から百種類あると予測されている関節リウマチの原因遺伝子のうち、新たに5種類を発見した。他に40種類の原因遺伝子の手掛かりもつかんでいる。遺伝子の大半を確認できれば、関節リウマチのより正確な診断や新薬開発に役立つ。 共同研究グループは関節リウマチの患者と健康な人の計2000人の血液を分析。ヒトゲノム(人間の全遺伝情報)のわずかな個人差を手掛かりに、原因遺伝子が存在すると考えられる47カ所を突き止めた。 (平成17年8月25日 日経産業新聞)

中学生の7%、外反母趾に 

中学生の外反母趾(がいはんぼし)の割合は約7%で、「予備軍」も含めると女子は全体の6割で10年前の2倍以上に増えている。そんな結果が埼玉県立小児医療センターの佐藤雅人副院長(小児整形外科)らの調査で出た。男子でも患者や予備軍が約4倍の5割と急増。佐藤さんは「車社会の影響などで、子どもの足の運動能力が低下しているのが最も関係しているのだろう」と推測している。 佐藤さんらは、同県内の同じ中学校で、93年に男女846人、03年に287人から足形をとって、足の親指の曲がり具合(外反角)などを比べた。 その結果、女子では、外反母趾と定義した「外反角30度以上」が、93年には1.3%、20〜30度の「予備軍」を合わせると27.3%だった。それが03年には、30度以上が8.0%、予備軍も含めると61.1%に。男子は93年は30度以上は0.2%、予備軍を合わせると12.8%だったのが、03年にはそれぞれ6.7%、49.1%と急増していた。 大人の場合は、窮屈な靴で足を締め付けることや、指が曲がりやすい体質などが原因とされる。だが、子どもの場合は、ハイヒールなどの窮屈な靴を履く機会は少ない。調査では男女とも、外反角と体の成長などとの間に関連もみられなかったことから、佐藤さんは「小さい頃から運動不足だと、足が扁平(へんぺい)足になり内側に力がかかって外反母趾になりやすい」とみる。(平成17年8月24日 朝日新聞)

飲む育毛剤

万有製薬は年内にも国内で初めて「飲む育毛剤」を発売する。米製薬大手メルクが開発し米国など60カ国以上で発売中の男性専用の脱毛症治療薬で、医師の処方せんが必要な医療用医薬品として販売する。国内発売するのは「プロペシア」(一般名はフィナステリド)。額から頭部中央部分の脱毛を抑え、育毛・発毛に効果があるという。原則1日一錠を飲み続ける。女性は服用できない。万有は2003年に承認申請しており、29日、厚生労働省の医薬品部会で製造承認のめどがついた。(平成17年7月30日 日本経済新聞)

C型肝炎無料検査を40歳未満にも拡大

厚生労働省は27日、保健所で無料で受けられるC型肝炎ウイルス検査の対象者を来年度にも40歳未満に広げることを決めた。 血液製剤「フィブリノゲン」によるウイルス感染問題で、40歳未満でも感染する危険があることから、これまで40歳以上としていた年齢制限を撤廃することにした。 同省は専門家会議が同日、C型肝炎対策の報告書をまとめたのを受け、検診費用などを来年度予算の概算要求に盛り込む方針。C型肝炎はウイルスの感染によって起こり、患者は国内で150万人以上いるとされる。 治療せずに放置すると、10―30年で肝硬変や肝臓がんになる可能性が高い。 体内のウイルスが少ないほど治療効果が高く、感染の早期発見が重要となる。(平成17年7月27日 日本経済新聞)

タマネギに含まれるケルセチンの投与で骨密度の減少を抑制

フラボノイドの一種でタマネギに多く含まれるケルセチンを骨粗鬆症モデルマウスに投与したところ、4週間後、骨密度の減少が有意に抑制したことを、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部の辻光義氏らが、「フラボノイド化合物ケルセチンの骨粗鬆症予防効果とその作用機構」と題したポスター演題の中で発表した。ケルセチンには、ガンや動脈硬化などの原因である活性酸素を抑える抗酸化作用と、花粉症やアレルギー性皮膚炎に対する抗炎症作用があることが報告されているが、骨量への影響に関してはまだはっきりしていない。この研究では、卵巣を摘出した骨粗鬆症モデルマウスを作成し、対照群には偽手術を行った。術後3群に分け、非投与群と対照群にはコントロール食を、他の2群にはそれぞれケルセチン0.25%および2.5%を添加した食餌を与えた。投与4週間後、第3腰椎の骨密度を測定したところ、ケルセチン2.5%群では非投与群に比べて有意に骨密度の減少が抑えられており、対照群とほぼ同じ程度の骨密度になっていた。一方、血清カルシウムやリンの濃度および子宮の重量には変化がなかった。 またケルセチンは植物エストロゲンとしての作用をもつとの報告があるため、辻氏らはin vitroでエストロゲン受容体(ERα、β)に対する活性を調べた。その結果、大豆由来の植物エストロゲンであるイソフラボン(ゲニステインとダイゼイン)はエストロゲン受容体に作用して活性が見られたが、ケルセチンでは活性は示さなかった。このことから辻氏らは、タマネギやホウレンソウ、パセリなど、ケルセチンを含有する野菜を積極的に摂取することが、骨粗鬆症予防に有効」であり、「イソフラボンとは異なる経路で生体に作用すると結論づけている。(平成17年7月28日 medwave)

骨を作る遺伝子を解明

東京医科歯科大学の高柳広教授らの研究グループは、骨が作られる仕組みを遺伝子レベルで解明した。国内に1000万人いるとされる骨粗しょう症患者の新しい治療薬の開発に道が開ける。体内の様々な骨は、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞と呼ぶ2種類の細胞の働きで新陳代謝を繰り返している。このバランスが崩れると骨がもろくなって骨粗しょう症になる。 研究グループは破骨細胞を活性化させるNFAT遺伝子から作られるたんぱく質が、オステリックスと呼ぶ別の遺伝子から作られるたんぱく質と協調して、骨芽細胞を活性化することを突き止めた。(平成17年7月27日 日経産業新聞)

若い女性の骨を強くするのはビタミンDと運動

食事によるビタミンDの摂取量を増やし、歩行数を増やすことが、血中ビタミンDの濃度を上げ、さらには骨密度を高めることにつながることがわかった。東京女子医科大学医学部産婦人科教室の黒田龍彦氏らが、平均20歳の女性を対象にした調査をもとに7月23日の口演セッションで発表した。骨密度は加齢とともに生理的に低下し、特に閉経後はエストロゲンの減少で、骨密度は顕著に低くなる。このため若い頃に骨密度を上げておくことが、将来の骨粗鬆症を予防するといわれている。このグループでは別の口演発表の中で、同じく若年女性を対象にした調査から「血中25OH-ビタミンD濃度が25ng/ml以上であれば、高骨密度の獲得につながる」と述べている。このためビタミンDは骨密度の増加に寄与するという前提に基づいて、黒田氏らは、若い女性のライフスタイルと血中ビタミンDとの関係について調べた。対象は19〜25歳の健康な女性293人。採血サンプルからは25OH-ビタミンDを測定し、日常活動をライフコーダー(生活習慣記録機)や質問表で記録、さらに食行動を自記式質問表を用いて分析した。この結果、ライフコーダーによる総エネルギーは平均1819Kcal、運動のみのエネルギーは221Kcal、歩行数は8810歩だった。 また血中ビタミンD量との関係を調べると、運動エネルギーと歩行数は正の相関を示し、逆にテレビ鑑賞やゲーム時間などエネルギー消費が極めて低い運動とは負の相関を示した。また食事からのビタミンDの摂取量と血中ビタミンD量は相関しており、ビタミンDの摂取量と歩行数には相加的な効果もあったという。このことから、血中のビタミンDを高濃度に保つには、食事によるビタミンDの摂取と歩行数を増やすことが若い女性においても必要であり、これは非薬物的介入法の一つであると結論づけた。(平成17年7月27日 medwave)

「職場高血圧」にご用心 

健康診断では正常な血圧の人の中に、仕事の合間に測ると高血圧の人が2〜3割もいた。こんな「職場高血圧」に関する調査結果を東京都老人医療センターの桑島巌・副院長(循環器病学)らがまとめた。9月にある日本高血圧学会で発表する予定だ。桑島さんは「必ずしもすぐ治療を要するわけではないが、高血圧予備軍と考えられる」といっている。 桑島さんらは東京都内にある販売会社本社の事務部門に血圧計を置き、仕事の合間に血圧を測ってもらった。健康診断では正常血圧だった社員151人(平均年齢約40歳)のうち55人(36%)が、仕事中は上の血圧(単位はミリHg)が140以上または下の血圧が90以上で、高血圧と診断される血圧だった。 ある役所の事務部門でも、健康診断で正常血圧の職員267人(平均年齢約42歳)のうち62人(23%)が、仕事中は高血圧に分類された。 血圧はかなり変動があり、桑島さんは仕事中は一般の人でも10程度は上がる可能性があると見ているが、調査で見つかった「職場高血圧」では、健診時より40〜50も上がっていた人もいた。「仕事のストレスが血圧の変動に影響しているのではないか」という。国内では約3500万人が高血圧と推定されている。成人の約3人に1人の計算だ。仮面高血圧(隠れた高血圧)の人が国内にどれだけいるかは分かっておらず、一定規模の職場で実施された今回の調査は注目される。 血圧計は1万円以下で手に入るものもある。松沢佑次・大阪大名誉教授(内科)は「個人差もあるが、まずは職場や家庭で測り、変動が大きい人は生活習慣を見直し、改善してほしい。場合によっては専門医の診察を受ける必要もある」という。 高血圧は放置すると、動脈硬化が進み、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などの病気につながる。食塩制限や野菜・果物の積極的な摂取、運動などの生活習慣の改善や、薬の服用で治療する。(平成17年7月21日 朝日新聞)

脚付け根の骨折、1年以内の9%死亡

高齢者の寝たきりの原因の一つ、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)(脚の付け根)骨折では患者の約9%が手術などの治療を受けてから1年以内に死亡していたことが、厚生労働省の研究班(主任研究者=萩野浩・鳥取大助教授)と日本整形外科学会による調査で明らかになった。特に高齢者では運動能力低下から持病の悪化を招く脅威と確認され、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防と転倒防止の重要性が指摘されている。治療後の寿命や日常生活動作能力(ADL)への影響を全国規模で調べたのは初めて。99〜01年の3年間に骨折した0〜111歳の患者1万2250人(平均79歳)のデータを分析した。2割強が80代後半で、入院期間は平均約2カ月。患者は女性が多く、男性の3.7倍。50代前半の閉経期を境に急激に増えており、骨粗鬆症の影響とみられる。 原因は単純な転倒が全体の4分の3を占め、おむつを交換しただけで折れた「おむつ骨折」も30件あった。 1年以内の死亡が確認されたのは1157人で全体の9.4%。1年後の生存率を年齢別に見ると、50代半ばまではほぼ100%だが、50代後半〜70代は9割台、80代は8割台、90歳を超えると7割台に落ち込んでいた。高血圧や心疾患、認知症(痴呆(ちほう)症)などの持病があると死亡率が高かった。一方、骨折前は「交通機関を利用して自由に外出できる」(29%)と「隣近所なら独力で外出する」(25%)が計54%だったが、骨折1年後にはそれぞれ17%と14%の計31%だった。調査をまとめた阪本桂造・昭和大教授(整形外科)は「大腿骨頸部骨折は、寝たきりだけでなく、持病が多いと死亡の間接的な引き金にもなる重い病気。適度な運動で骨が弱くなるのを防ぐことと、転倒防止対策の充実が必要だ」という。(平成17年7月19日 朝日新聞)

平凡・無害なウイルス、実はがんキラー 

誰でも感染経験をもつ平凡で無害なウイルスが、実は、がん細胞だけを狙って殺せる「すぐれもの」だと分かった。米ペンシルベニア州立大のチームが発表した。新たな治療法への発展も期待できるという。アデノ随伴ウイルス2型(AAV2)という病原性のない小さなウイルスで、日本の専門家によると、成人の85%が感染経験をもっている。 チームは、AAV2に感染している女性がウイルス性の子宮頸(けい)がんにかかりにくい、という現象に着目。子宮頸がんのほか、乳がんや前立腺がんなどの細胞とAAV2を培養したところ、がん細胞が6日後にすべて死滅したという。 AAV2はがん細胞に侵入した後、DNAに何らかの細工をするとみられる。チームのメヤーズ教授は「正常な細胞には悪影響がなかった。AAV2はがん細胞を見分けているらしく、新たな治療法になる可能性がある」といっている。(平成17年7月18日 朝日新聞)

総コレステロール値と心筋梗塞の発症とは無関係

血液中の総コレステロールの値は心筋梗塞(こうそく)を発症する危険性とほとんど関係がないとの調査結果を、青森県立保健大の嵯峨井勝教授(環境保健学)らが15日、東京都内で開かれた日本動脈硬化学会で発表した。関係するのは血圧や「善玉」と言われるHDLコレステロールの値だった。嵯峨井教授は「総コレステロールより血圧に注意し禁煙と運動で善玉コレステロールを増やすべきだ」と訴えている。同学会は、血液1デシリットル中の総コレステロールが220ミリグラム以上を「高コレステロール血症」と定め、心筋梗塞の可能性が高まるとして、喫煙者や45歳以上の男性、55歳以上の女性は220未満に抑えるべきだとの指針を発表している。220以上は全国で2300万人と推定されるが、今回の調査は指針に疑問を呈する形となった。嵯峨井教授らは、04年度に青森県内で健康診断を受けた40歳以上の男女1491人について、総コレステロール値やHDL、血圧、年齢、性別、喫煙の有無を調査。全国の男女5万人を6年間追跡して心筋梗塞の発症率を調べた別の調査と比較した。総コレステロールが260程度でも、大半の人の発症率は1%未満にとどまった。180程度でも、喫煙などの影響で同約5%に達する人もおり、総コレステロール値と心筋梗塞の発症率にはほとんど関係がなかった。(平成17年16日 毎日新聞)

味覚障害、国内に24万人

国内の味覚障害患者は推定約24万人で、13年前の1.8倍に増加。そんな結果が日本口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)科学会の調査で明らかになった。社会の高齢化が進んだためとみられる。スウェーデンの専門誌の最新号に発表した。味覚障害は命に別条はないが、生活の質に影響する。学会は03年6月に全会員へアンケートを送り、441施設から00〜02年の患者数などの回答を得た。1施設当たりの1カ月の患者数は大学病院(83施設)で9.4人、一般病院(143施設)で5.3人、個人医院(215施設)で3.7人だった。これをもとに全国の耳鼻咽喉(じびいんこう)科施設数から推計すると、1年間の国内の患者数は24万4858人で、90年に調査した時の推計13万8575人の1.77倍に増えていた。治療については7割の医師が亜鉛の含まれる経口薬を使っており、うち4分の3強が有効であると答えた。441施設のうち27施設で味覚専門外来を開設していた。味覚障害は、降圧利尿薬など薬剤性によるものが多いほか、糖尿病や腎不全などで体内の亜鉛が排出されたり吸収が悪かったりする場合もある。お年寄りに多く、大幅増は高齢化が進んだ影響が大きいとみられる。調査をまとめた池田稔・日本大助教授は「グルメブームなどで微妙な変化に敏感になっている人も増えているかもしれない。味覚障害は生命の危機に直接は結びつかないが、生活の質を大いに損ねる。味がわからないような場合は、近くの耳鼻咽喉科や内科に相談してほしい」と話している。(平成17年7月17日 朝日新聞)

培養真皮

重い皮膚潰瘍(かいよう)ややけどの治療に、人の真皮細胞を培養してシート状にした「培養真皮」が基本的に安全で有効であるとする研究成果を、厚生労働省の研究班(主任研究者=黒柳能光・北里大教授)がまとめた。 00年度から5年間の臨床研究で404人に使われ、9割以上で患者の状態の改善につながったといい、製品化が期待されている。 皮膚は、厚さ0.1ミリの表皮と、その下の厚さ数ミリの真皮で成り立つ。 今回の培養真皮は黒柳さんらが独自に開発した。 提供してもらった人の皮膚から線維芽細胞を取り出して培養、それを皮膚の再生を促すコラーゲンとヒアルロン酸でつくった特殊なスポンジシートに組み込んだ。 10センチ四方のシートを、ガーゼのように患部に当てて皮膚の再生を促す。 北海道大や慶応義塾大、九州大など30の医療施設が参加した臨床試験で、使ったシートは5千枚近く。 患者の皮膚の再生ぶりや感染症が抑えられるかなどを、点数化して患者ごとに評価した。「安全」と評価されたのは、89.4%で、「安全に疑問」「安全でない」は合わせて1.7%だった。 総合評価は、62.6%が「極めて有用」で、30%が「有用」。 「有用でない」は1%に満たなかった。 培養表皮、真皮は米企業が製品化しているが、国内未承認。今回の培養真皮は、皮膚再生を促す仕組みが海外製品に勝ると黒柳さんはいっている。(平成17年7月11日 朝日新聞)

天然痘テロ

国内で天然痘ウイルスを使った生物テロが起きた場合に備え、専門家らでつくる厚生労働省研究班が、国家備蓄に必要な天然痘ワクチンの量を「5600万人分」と算出していることが分かった。 天然痘テロ対策として、科学的にワクチン備蓄量が提示されたのは初めてで、厚労省ではこの研究を参考にしながら、備蓄体制の整備に乗り出す。 研究班は国立感染症研究所や大学などの研究者らで構成。日本では1976年に天然痘の予防接種(種痘)を廃止しており、研究班では76年以降の出生者が約
3800万人、76年以前に生まれ、健康上の問題などで種痘を受けなかった人が約2割(約1800万人)いると推計した上で、「財政面も考慮し、合わせて約5600万人分があれば対応できる」とした。 備蓄するのは、副作用の少ない「LC16m8」と呼ばれるワクチンを提案。 現在、同ワクチンを製造できるのは熊本市にある財団法人化学及血清療法研究所だけで、研究班では、国と同研究所が契約を結び、常に一定のワクチン製造能力を保つよう求めている。 1人分のワクチンを約300円とした場合、研究班の提案通りに備蓄を進めればワクチン費用だけで168億円かかることになる。 2001年の米国炭疽(たんそ)菌テロ以降、生物テロに対する警戒は全世界で強まり、中でも致死率の高い天然痘は、欧米などで全国民分のワクチン備蓄や種痘を進める動きが出ている。 日本政府も、2001年に約300万人分のワクチン備蓄を決めたが、その後は「危機管理上、問題がある」として、備蓄計画などを明らかにしていない。 今回、国費による研究班の報告がまとまったことを受け、厚労省厚生科学課は「生物テロは依然として大きな脅威。報告を参考にしながら、備蓄や研究を進めていきたい」としている。 かつて世界保健機関(WHO)の天然痘根絶対策本部長を務め、今回の研究をとりまとめた蟻田功・財団法人国際保健医療交流センター理事長は「いつ起きるか分からないテロに備えるのは難しいが、事が起きてからでは遅い。 国は早急に備蓄を進めるとともに、ワクチンの効果や使い方についてさらに研究を進めることが重要」と話している。(平成17年7月1日 読売新聞)

小児のいびきは多動発症の予測因子

いびきをかく小児はそうでない小児と比べて、注意力や多動(活動過剰)に関する問題を来す可能性がはるかに高いことが知られている。米ミシガン大学睡眠障害センター所長のRonald D. Chervin博士は「両者の関係はきわめて強く、因果関係があると言える」とした上で、いびきや他の睡眠障害は将来的な多動の発症あるいは悪化を占う強い危険因子となるとの見解を示した。 ミシガン大学およびワシントン大学の研究者らは、4年前に実施した小児科領域の調査対象とした866例から、現在6〜17歳の小児229例を抽出し評価した。このうち、多動であると考えられたのは30例であった。4年前の調査でいびきが日常的に認められた小児は、今回の調査までに多動を来していた確率が約4倍であった。さらに、4年前の調査時での、いびきの習慣や大きないびき、眠気または睡眠を損なう呼吸の有無によって多動が予測されることがわかった。 ただし、どのようにしていびきが多動を引き起こすかについてはまだ明らかではない。ジョンズ・ホプキンズ大学小児センター小児睡眠障害プログラムのAnnHalbower博士は「証拠はまだ得られていないが、少なくともいびきと多動との間に因果関係が強く示唆される」とした上で、何らかの基礎疾患によっていびきと多動の両者が生じるということも考えられると指摘する。 いびきは、学校生活に支障を来すなどさまざまな問題との関係が明らかにされている。Chervin博士は、保護者が睡眠の問題を深刻に受け止め、症状の詳細を知るため小児専門医を受診するよう勧めている。 現在、いびきの治療として最も頻繁に実施されるのは扁桃(へんとう)およびアデノイドの切除である。(平成17年7月8日 日本経済新聞)

脳血管性認知症、演奏や運動で症状改善

脳卒中で脳の血流が悪くなって起こる脳血管性認知症(痴呆(ちほう))は、楽器演奏やゲームなどのレクリエーション活動により、症状が改善することを、国立長寿医療センターの研究グループが突き止め、米老年医学会誌に発表した。 認知症は、脳梗塞(こうそく)などの後に発症する脳血管性認知症と脳細胞が委縮するアルツハイマー病に大別される。 研究グループは、同センターに入院する脳血管性認知症45人、アルツハイマー病37人の計82人に、楽器演奏や、風船を使ったバレーボール、体操、踊りなどのレクリエーション活動を、週に5回(1回90分)ずつ続けてもらった。 その結